「最悪のシナリオ」
ギリシャに端を発するEUの経済不安は、ギリシャ一国に押し止
めることが出来ずに、ついに、EUの中で第三位の経済大国イタリ
アにまで波及した。小国ギリシャの経済破綻さえ食い止めることが
出来なかったEUがイタリアの経済まで立て直すことはまず不可能
に違いない。だとすれば、経済不安の連鎖は止むことなく、懸念さ
れていた国々にも大きな影響を与えるに違いない。それはもうEU
経済の破綻である。IMFによると、2010年のEUのGDPは
16兆1068億ドル(約1300兆円)で、アメリカのGDPをや
や上回っており、世界全体の約26%を占めている。つまり、EU
の経済破綻はアメリカや日本が巨額の債務に苦しんでいる中で、間
違いなく世界恐慌をもたらすだろう。多分そんな先の話ではないと
思う。グローバル経済は南北間の壁を取っ払うことによって先進国
の経済成長が新興国に流れ込んで水準化し、先進国の経済が落ち込
んでしまった。新興国の経済成長とは先進国が既得していた経済成
長に過ぎない。経済のグローバル化は繁栄だけでなく衰退ももたら
す。連動する世界経済の中で連鎖的に世界恐慌へと波及するのにそ
れほど時間は掛からないだろう。金融の自由化によって一夜にして
金融不安が世界を駆け巡り銀行が相次いで破綻する。それは政府が
支える規模を遥かに超えているだろう。それぞれの国は自国経済を
守る為に資金を回収しグローバル経済から撤退する。
さて、わが国はすでに1000兆円を超える負債を抱えて身動き
出来ない状態であるが、金融界が国債への投資資金を引き揚げただ
けでその金利が上昇して財政が破綻するのは火を見るよりも明らか
で、最早その危険水域を超えている。つまり、経済不安の影響を最
も受けるのは間違いない。恐らく来年の今頃は財政不安が顕在化し
て経済危機が再燃しギリシャの二の舞を演じることになるのではな
いだろうか。ちょうどその頃、アメリカは大統領選挙の終盤を迎え
て内政に目が向き日本どころではないだろうし、アメリカ自身も財
政不安を抱えている。否、それよりも早く世界恐慌の波が襲うかも
しれない。つまり、世界恐慌の導火線は張り巡らされているのだ。
われわれは何度も財政再建が叫ばれながら「経済成長なくして財
政再建なし」と聴かされて、その度に借りた金を負債の返済ではな
く経済成長に賭けて更に負債を膨らませ、遂に、われわれは今、目
の前の危機を認識しながら身動き出来ずにどうすることも出来なく
なってしまった。それはまるで、借金を博打で返済しようとして負
債を重ね、遂には財産を失い借金が返せなくなり破産宣告を受ける
成金の哀れな成れの果てを見ているようだ。