「目覚めた獅子 中国」
(3)
それでは日本はどうかと言えば、何とわが国には「現人神」が御
座します。しかし、そもそも西欧世界で神とは全知全能で当然不老
不死で「一神だけ」ですが、ところが、わが国の神は「万世一系」
の下に世襲することによって「神の死」を凌いできました。そうで
す、わが国の現人神は死ぬのです。それは、一神教の世界からみれ
ばとても神とは呼べない存在に違いありませんが、たぶん天皇とは
神と言うよりは世襲制の身分のようなものかもしれません。世襲制
の身分とは封建社会そのものですが、数多の権力者たちは天皇の地
位を脅かすことがなかった。こうしてわが国は伝統文化の象徴たる
天皇と実権を預かる権力者の二元政治が時代に流されながら盛衰を
繰り返して近代化の夜明けを迎えることになる。さて、ここで私は
天皇論を論ずるつもりは毛頭ありませんので、言いたいことだけを
吐いて逃げ去るつもりですが、ただ、こうして日本には中国とも、
またキリスト教社会のアメリカとも違う独自の支配構造があった。
このことが同じ儒教国でありながら中国・韓国とは異なった道を
拓いた。つまり、身分社会(武家社会)という封建主義に固執する権
力者に代わるもうひとつの道(オルターナティブ)が残されていたこ
とが、天皇(神)の視点から生れる平等社会への転換(明治維新)が図
られ、もちろん紆余曲折は避けられなかったが近代化へと続く道を
拓いた。確か政治学者の丸山真男だったと思うが、民主主義が成立
する前段階として封建国家から絶対主義国家への移行が重要だと言
ったが、つまり、封建体制はどうしても相対主義から抜け出せない
からだと思うが、ところが、まさに日本には社会を3次元的視点か
ら窺う絶対者としての「天皇」が御座したのだ。
(つづく)