「二元論」
(4)のつづき
難解な哲学用語は使わないと言っておきながら、「世界=内=
存在」というハイデガーが造った言葉を引用してしまったが、こ
れは実に私の思いに的中したからで、凡そのことがこの一言で納
得できるのではないかと思ったからです。つまり、われわれは自
然の中から萌え出て、そして自然へと還っていく生き物で、世界
の外で存在することはできないということです。もちろん、現在
では宇宙飛行士のように地球を飛び出して宇宙に滞在する人も現
われていますが、しかしそれは金魚鉢の中の金魚のようなもので
、彼らとても予め用意された人工の地球環境の中でしか生存する
ことができません。つまりいくら世界を飛び出したとしても「世
界=依存=存在」であることに変わりはありません。また。われ
われの存在は世界内で完結するのであれば、もちろん肉体を離れ
た霊魂のようなものは別にして、たとえば神のような存在が世界
の外から人間を創ったというようなことは決してあり得ないとい
うことです。もっと分かりやすく言えば、「われわれとは何であ
るか?」の答えはこの世界の内にしか無いということです。さて
、ではわれわれとは何者かと言えば、「世界=内=存在」であり
、自然の中から発生して自然の中へ消滅する時限的存在である。
そしてなによりも重要なことは、われわれはそのことを認識して
いるということである。
(つづく)