【2015年3月31日】 『2014年度版・歴代映画ベスト20』-今の印象を基にした主観的選考
従来の選考方法は、【今までに観た映画のうち、最も印象に残った映画、感銘を受けた映画のうち、現在の印象を基準にして『ベスト20』を選考】していたが、これだとランキングが前年と比較して、毎年大きな変化がなく、いい映画(自分の基準で)を紹介するというもう一つの目的が果たされにくいので、今年から選考基準を若干変更する。それは、【昨年度見た映画のうちで】という条件を加え、DVD、テレビ放送などで再び見た直近の印象を重視してランク付けしている。
あくまでも、今年度・今現在のランキング!である。
名作の絶対的条件は《何回見ても新鮮なこと》・《何度でも観たい映画》であること。それには普遍的な真理が含まれている事、観て面白い事が必要条件である。
この点は昨年も今年も、おそらくずっと変わらない基準である。
映画評論家は、往々にして「どの映画でも、見るに値する『いい映画』として紹介する」傾向にある。特に、映画の予告編やチラシに寄せられるコメントや推薦文はおのずと《いい評価に偏る》を通り越して《絶対見逃せない作品》に祭り上げられる。それを鵜呑みにして、どれだけ時間とお金を浪費させられたか。
それとは別に、評論家に限らず誰でも、《好み》には個性と言うか違いがあり、人それぞれである。人生観も違えば価値観も違う。映画を観る時の《自身の状況》によっても違う。だから、《その人》が良いという映画が、自分に合っているかどうかは、《その人》の《傾向》を知らなければならない。
以上のことを前提として、この《個人的で主観的な》『2012年度版・歴代映画ベスト20』と併せて、以前書きためた《マイブログ》を読んで、わたしの嗜好の傾向をつかめば参考になると思う。
【 2014年度版 ベスト映画ランキング 】
第1位 『ナイロビの蜂』 (2005年 イギリス映画)
監督:フェルナンド・メイレレス 原作:ジョン・ル・カレ
出演:レイフ・ファインズ、レイチェル・ワイズ
大製薬会社の治験に関わる不正を、雄大なアフリカの自然の中で追及するふたり。
最後のシーンは何とも悲しいが、この映画の二人のように情熱的に生きられたらどんなに
いいかと思う。
第2位 『サンドイッチの年』 (2001年 フランス映画)
監督:ピエール・ブートロン 原作:セルジュ・レンツ
出演:ヴォイツェフ・プショニャック(マックス)、
トマ・ラングマン(ヴィクトール)
マックスを演じるヴォイツェフ・プショニャックが大きな魅力だ。
第3位 『ローマの休日』 (1953年 アメリカ映画)
監督:ウイリアム・ワイラー 脚本:ダルトン・トランボ他
出演:オードリー・ヘップバーン、グレゴリー・ペック、エディー・アルバート
最後のシーンは何度見てもしびれる。
『ローマの休日』-マイブログへジャンプ
『「ローマの休日」を巡るイタリアの旅』のマイブログへジャンプ
第4位 『ヤコブへの手紙』 (2011年 フィンランド映画)
監督:クラウス・ハロ 脚本:クラウス・ハロ 、ヤーナ・マッコネン
作曲:ダニ・ストロムベック 美術:カイサ・マキネン
出演:カーリナ・ハサード(レイラ)、ヘイッキ・ノウシアイネン(ヤコブ)、ユッカ・ケノイネン(郵便配達人)
『ヤコブへの手紙』-マイブログ(2011/05/22)へジャンプ
『ヤコブへの手紙』-オフィシャルサイト
第5位 『ラブソング』 (1996年 香港映画)
監督:ピーター・チャン 撮影:
出演:マギー・チャン、レオン・ライ
ストーリー展開の軽快さ、内容の濃さ、微妙な感情の繊細な表現、カメラワ
ークのうまさ、効果的な挿入歌の使用、どれをとっても唸らせる。
マギー・チャンの魅力を最大限発揮させ、何回見ても飽きないし、いつみて
も新鮮。最初と最後のショットの掛け合いが実にしゃれている。
第6位 『燈台守の恋』 (2004年 フランス映画)
監督:フィリップ・リオレ
出演:サンドリーヌ・ボネール、フィリップ・トレトン、アンヌ・コンシニ
グレゴリ・デランジェール、エミリー・ドゥケンヌ
『灯台守の恋』-マイブログにジャンプ
第7位 『リトル・ダンサー』 (2000年 イギリス映画)
監督:スティーブン・ダルトリー
出演:ジェイミー・ベル、ジェリー・ウォルターズ、ゲイリー・ルース
第8位 『サラの鍵』 (2010年 仏映画)
監督:ジル・パケ・プレネール
出演:クリシティン・スコット・トーマス、他
『サラの鍵』-マイブログ
『サラの鍵』-公式サイト
第9位 『アマデウス』 (1984年 アメリカ映画)
監督:ミロシュ・フォアマン
出演:トム・ハルス、マーリー・エイブラハム 、
タイトルは、モーツアルトの名前が冠せられているが、進行はモーツアルトによって
《人生をめちゃめちゃにされた》宮廷音楽家・サリエリの述懐の物語である。劇中に
モーツアルトの曲が効果的に流れ、うきうきするとともに、トム・ハルスの演じる個性的な
モーツァルト像は、従来の《モーツアルト観》をひっくり返す驚きの新しい発見がある。
第10位 『鑑定士と顔のない依頼人』 (2013年 イタリア映画)
監督:ジョゼッペ・トルナト―レ
出演:ジェフェリー・ラッシュ他
監督は『海の上のピアニスト』のジョゼッペ・トルナトーレ、音楽も同じくエンニコ・モリオーネが担当しているから悪いわけがない。(そうは言っても、前作の期待に応えず、よくないのも往々にしてある。)
【これぞ映画!】という醍醐味を感じさせてくれる、あっと驚くストーリ-と迫力、映像美を持った映画である。
第11位 『嘆きのテレーズ』 (1953年 仏・伊映画)
監督:マルセル・カルネ 原作:エミール・ゾラ『テレーズ・ラカン』
出演:シモーヌ・シニョーレ、ラフ・バローネ
この映画の舞台となった「リオン」の街が見たくて、今年の春、はるばるフランスのリオンまで行ってきた。
第12位 『ゴッド・ファーザー』(Part1~3) (1972年 アメリカ映画)
監督:フランシス・コッポラ 原作・脚本:マリオ・ブーゾ
音楽:ニーノ・ロータ
出演:マーロン・ブランド、アル・パチーノ、ジェームズ・カーン
人物の性格描写はピカ一である。やはり第1部が一番いいが、今回はやはり
一連のストーリー性を鑑み、第3部まで含めて1つの作品とする。
自分は元来、ギャング映画など好んで見る方ではないのが、この映画は激し
い暴力の描写もあるが、単なるギャング映画とは全然違う。家族愛と人間同士
の絆を描いた映画である。
家族を守っていくために世の中と対峙し、孤独を深めていく男の姿は、きび
しい世の中で、いつでも見られる孤独で悲しくさびしい姿である。
第13位 『Shall We ダンス?』 (1996年 日本映画)
監督:周防正行
出演:役所広司、草刈民代、竹中直人
この映画の制作が取り持つ縁で、監督と草刈さんが結ばれたといういわくつきの映画。『憲法週間』で
冤罪事件に関する周防監督の講演を聴き、『それでもボクはやっていない』とどちらにしようかと迷った
が、ロマンスを感じるこちらの方にした。
第14位 『たそがれ清兵衛』 (2002年 日本映画)
監督:山田洋次 原作:藤沢周平 脚本:山田洋次、朝間義隆
音楽:富田 勲 撮影:長沼六男 美術:出川三男
出演:真田広之、宮沢りえ、田中泯
真田広之の清兵衛はあまりにもかっこいいし、宮沢りえが凛と輝いている。
山田洋次が手がけた最初の時代劇であるが、その後の『隠し剣・鬼の爪』、『武士の一分』は、
それはそれでいいのだが、他の監督が作った一連の『藤沢周平物』と比べても、ピカいちである。
第15位 『拝啓天皇陛下様』 (1963年 日本・松竹映画)
監督:野村芳太郎
出演:渥美清、長門祐之、左幸子、桂小金時
天皇制を賛美する映画ではない。現代の《経済徴兵制》を連想させるような、《食うためには軍隊が一番》と
そのことの是非までにも考え及ばない、純朴な一兵士の物語である。
交響曲『ヒロシマ』を巡り、《日本のベートーベン》騒ぎもあって、野村監督の『砂の器』も思い出したが
今年は見ていない。
第16位 『鉄道員』 (1956年 イタリア映画)
監督:ピエトロ・ジェルミ
出演:ピエトロ・ジェルミ、ルイザ・デラ・ノーチェ、シルバ・コシナ
高倉健の『鉄道員(ぽっぽや)』ではなく、イタリア映画の方である。無性に見たくなって、改めて感動する。
第17位 『飢餓海峡』 (1965年 日本映画)
監督:内田吐無 原作:水上勉「飢餓海峡」
出演:三國廉太郎、左幸子、伴淳三郎、加藤嘉
亡くなった人ばかり出てくるが、昔の映画は《すごい!》につきる。
第18位 『ある精肉店のはなし』 (2013年 日本映画)
監督:纐纈あや
出演:北出精肉店の皆さん、
「こんな映画、はじめて!」と感激することがいっぱい。纐纈さん!よくぞ撮ってくれた。
『ある精肉店のはなし』のマイブログへ
第19位 『ひまわり』 (1970年 イタリア(仏・露)映画)
監督:ビットリオ・デ・シーカ
出演:マルチェロ・マストロヤンニ、ソフィア・ローレン
ソフィア・ローレンとマストロヤンニの映画は他にも沢山あるが、つい哀愁のこもったテーマ曲を思い浮かべる
これが一番。
第20位 『にあんちゃん』 (1959年 日本映画)
監督:今村昌平
出演:長門裕之、松尾加代、吉行和子、殿山泰司、北林谷栄 他
小学五年生の時、学校の講堂で見た映画が「これだったのだ」と知ったのは、大学に進んでからだった。
何も政治状況のことは理解していなかったが、ずっとどこか心の中に残っていた感動があった。
あらためて見て、「そうだったのか!」と気持ちを新たにすることしきり。
番外 『死刑弁護人』 (2012年 日本)
制作:東海テレビ 監督:齋藤潤一
出演:安田好弘
もともと映画として制作されたものでなく、「東海テレビ」がテレビ用ドキュメンタリー番組
として制作したものである。
「オウム真理教事件」麻原彰晃。「和歌山毒カレー事件」林眞須美。「名古屋女子大生誘拐事件」木村修治。
「光市母子殺害事件」元少年-これらすべて死刑事件の裁判を担当している弁護士-安田好弘の生き様を追った
ドキュメンタリーである。物事を一面からだけで判断してはならないということを痛切に教えてくれる。
『死刑弁護人』-のマイブログへ
********************************************
今回、自分の過去のある時期、ずっと第1位だと思っていた『幸せの黄色いハンカチ』をはずしてしまった。それ以前は『戦艦ポチョムキン』や『市民ケーン』がずっと3本の指に入る映画だと思っていたが、昨年もその前も20位以内には挙げていなかった。しかし、それらの作品が色あせてしまったわけではない。人生にいろいろな局面が次から次に出てきて、その都度感銘を受ける作品が出てきて、とても20位に収めきれなくなってしまっただけである。
以前挙げた映画以外で、今回も20位内に挙げられなかった気になる候補作品を列挙すると、
『ホテル・ルアンダ』、『シンドラーのリスト』、『砂の器』、『東京物語』、『上意討ち』、『椿三十郎』、『天国と地獄』、『金環食』、『同胞』、『故郷』、 『家族』、『学校』シリーズ、『男はつらいよ』シリーズ、『無法松の一生』、『人情紙風船』、『ライムライト』、『街の灯』、『モダンタイムス』、『アメリカン・ヒストリーX』、『戦艦ポチョムキン』、『西部戦線異状なし』、『マジソン郡の橋』、『シェルブールの雨傘』、等々。
最近見た新しいところでは、『ル・アーブルの靴磨き』、『故郷よ』、『きっとうまくいく』、『アルバート氏の人生』、『天使の分け前』、『ジンジャーの朝』、『飛べダコダ!』、『LOREさよならアドルフ』、『ネブラスカ』などもよかったが。
まだまだ挙げたい映画が多くあり、どれを20位に入れても不思議はない。いずれ、再度見たときに、ランク・インするかもしれないが、本年度は以上とする。
『2012年度(前年度)ベスト映画』-マイブログへジャンプ
『2013年版・今年見た映画一覧』-マイブログへジャンプ