【 2018年4月17日 】
旅行記をまず書くべきだったが、旅行から帰った直後、旅の復習のつもりで読み始めた『チェ・ゲバラ』の本に嵌まってしまった。
【 今回のキューバ旅行の1シーン ハバナ郊外のバーで 】
もう10年以上も前になるか、映画『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』の音楽に魅せられて以来、テレビの『キューバ紀行』の番組を見ては、カリブ海にそそぐ太陽のようにその明るく陽気で楽天的な人々の生活する国、50年代のアメリカのクラッシック・カーが現役で走る国に興味を寄せていた。一方、アメリカの圧力のもと、決して物質的に豊かとはいえない状況で、医療や教育などの分野で世界の最先端の政策を実施している国はどんなだろうかと。
とどめは、昨年公開された映画「エルネスト」だった。カストロが牽引する一風変わった社会主義国キューバの生い立ちから、その中でゲバラがどんな役割を果たしたのか、どうしてボリビアで亡くなったのか、革命はどんな経過をたどったのか、等を知りたいのと思い、とりあえず現地に行ってみようと「キューバ行き」も決めた。
キューバにせっかく行くのだったら、もっとよくキューバを知ろうと観光ガイドを読むが、知りたい情報が少ない。店頭で目に付いた「ゲバラ」の本(チェ・ゲバラ-革命を生きる・知の再発見シリーズ)をざっと目を通す。
改めて思うが、日本の歴史教育はいい加減だ。日本史は明治大正以降は簡略化されているし、昭和以降なんて全く扱わない。世界の歴史でも西欧中心だ。これから訪問しようと思う中南米のアメリカ史なんか「インカ文明がスペイン人に滅ぼされた」ことしかない。その他は全くの白紙である。
もっと知りたいと思い、もう1冊の本を手に取ったが、旅行が先に来てしまった。旅行の《復習》のつもりで読みかえしたら、面白い。著者の広瀬隆氏のフィデルとゲバラへのほれ込みようが伝わってくるようである。ふたりの個性がいかにうまくかみ合って「キューバ革命」が導かれたかがよくわかる。中国や北朝鮮などのようの独裁者が《神格化》されないで個人崇拝を排除しているのがいい。フェデルの弟のラウルは、革命当初から同じように関わっているのに、控えめで決してしゃしゃり出ない姿が印象に残った。
圧巻は、最後のこの本だ。広瀬氏の本の中で、この本の紹介(参照)があり、「良本です」の言葉が添えれあったので、読む。それまで、キューバの革命以降の話は大体わかったので、周辺諸国の歴史をもう少し知りたいと思って図書館で探すが適当なのがない。グアテマラやペルー、エクアドル、ドミニカ、ボリビア、そしてアルゼンチンやチリがどんな関わり合いをしていたか知りたかったが、分厚い専門書を読む気にもなれない。とりあえず、読み進んだら、やはり離せなくなって一気に読んでしまった。
これが『新書』で出版された本かと驚くくらい充実した、情報満載の内容だった。アジェンデやチトーやナセル、新しいところではチャベスも登場する。もちろん、ケネディーもフルッショフも登場するが。(もう、中南米の歴史書は読まなくてもいい-これで私にとって充分満足だ!)それと、一番の関心はフェデルとゲバラの関係にあるのだが、客観的事実を積み重ねた偏りのない記述に好感が持てる。一方は、革命政権を継続させるため権力の中枢に残り、他方は異国の血で一人の革命家として命を落とす。お互いの長所も欠点もさらけ出す。その上での深い絆と友情。ゲバラを通じてのフィデルの《器の大きさ》も実感できた。
読み終わった瞬間、中南米に光り輝く太陽がその歴史を更に明るく輝かせるように見えた。
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今日の新聞に、ラウル・カストロが4月末までに、第一線を退く報道が掲載されていた。1つの歴史が終わる。
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