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【2015年7月14日 記】
父親が亡くなったのは1年前の夏。早いもので、もう1年がたってしまった。
法事で横浜に帰る。新幹線に乗れば京都から新横浜まで2時間弱で着いてしまう。しかし、遠い。たびたび帰るわけにはいかない。
1日目の午後に、近い家族だけで『一周忌の法事』を済ませ、その晩は実家に泊まる。翌日、まっすぐ帰れば昼過ぎには京都に戻れる。しかし、せっかく関東まで出てきたのだから、何処かに寄って帰ろうと思う。横浜駅で『湯麺(タンメン)』も食べて帰りたい。
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とりあえず根岸橋から横浜駅に出る。『みなとみらい』は昨夏も行ったから別の所に行こうと思う。最近見た映画『海街Diary』のシーンを思い出した。そうだ、鎌倉に寄ってみよう。
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黒澤明の『天国と地獄』に出てくる、横浜市内の「黄金町」と思しき街の様子や、犯人を追い詰め、その《アジト》を探すのに鎌倉海岸あたりを車でめぐるときに映る「稲村ヶ崎」から「腰越」あたりのに至る風景や、「江の島」の姿は《よく見慣れた景色》だったが、場所を特定するのに、映画の中のセリフで『ガッタンコ・ガタンコといわせながら、架線の音をシュルッルッルッと引きずるのは『江ノ電』の沿線に違いない』と形容されら『江ノ電』には、今まで乗ったことがなかった。
だから、鎌倉の海沿いの道を何度も通っていても、少し奥まったところを通る『江ノ電』の「極楽寺駅」周辺にも行っていない。
『海街Diary』の舞台はその「極楽寺」が舞台だから、「北鎌倉」でJRを降り、近辺の寺に立ち寄りながら《切通し》を抜け、歩いて「鎌倉駅」まで行き、そこから『江ノ電』に乗り、「江の島」まで行くことにする。
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7月にはいり、ずーっと曇天が続いていたが、3つ子の台風が高気圧を押上げ、前日から夏空が戻り、その日も30度を超えるカンカン照りの真夏日だった。
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汗をぬぐいながら、昨年行った『円覚寺』前を過ぎ『鶴岡八幡宮』方面に進む。すぐに『東慶寺』がある。一昨年に読んだ、井上ひさしの『東慶寺花だより』の舞台である。この小説の方は、今封切中の映画『駆け込み女と駆け出し男』の原作本となっている。
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境内は、やはり涼しい。心地よい風が吹き抜ける。となりの『浄智寺』の境内もやはり涼しかった。京都のお寺もこんなだったかと考えるが、これほど涼しくはなかったように思う。海が近いから風もその分気持ちよく感じられる。
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横須賀線の踏切を渡り、傍らにあった蕎麦屋に入る。ここの蕎麦が最悪だった。ふつう蕎麦屋のメニューに『ざるそば』はあるはずなのに、それがない。おかしいなと思いつつ、『山かけ蕎麦』と、妻は『山菜そば』をたのんだのだが、案の定、一口食べただけで《はずれ》だった。なんで《あんな蕎麦に1600円も払わなければいけないのか》と思いつつ店をでる。
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横須賀線は、北鎌倉から鎌倉駅をトンネルをくぐり結んでいるが、徒歩で鎌倉駅まで結ぶ最短の道は、線路とほぼ並行して走っていて、その途中に『亀ヶ谷坂切通し』がある。切り通しは海からの風が通り抜け、真夏の太陽を遮る木立の下の道は殊のほか涼しい。ここは生活道路ともなっており、車は通り抜けできないが単車が数台通り抜けていく。
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途中、2~3の寺の前をとおり「鎌倉駅」に着く。ここから待望の『江ノ電』に乗り込む。
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始発の「鎌倉駅」を出て、「極楽寺駅」はトンネルをくぐってすぐの4つ目の駅である。
映画『海街Diary』が封切られて間もないせいか、駅にもそのポスターが貼ってあり、ここを同じように訪ねてきたと思われる数組が駅で降りる。
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映画のシーンで見たような、見なかったような駅前の様子を確認しながらあたりを散策する。『極楽寺』は駅を出て、ホームのすぐ近くにあったが、四姉妹の《住居》らしきモノは見当たらない。
せっかくだから、「極楽寺」の境内を巡ってからホームに戻る。
次の「稲村ヶ崎駅」に向かう。
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【『江ノ電・稲村ヶ崎駅 』】
駅から数百メートル南に行くと海岸である。
それまでの木陰の寺院とは対照的に、海は圧倒的である。
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【 「稲村ヶ崎」と海岸風景 と「江の島」 】
近づきつつある台風のせいか、うねりが激しく、波しぶきで江の島も霞んで見える。10分もいたら、眼鏡のレンズが細かい波飛沫で曇りガラスのように前が見えなくなる。それでもサーファーにとっては今日のような天候の方が好都合なのだろう。ボードに乗って果敢に沖に向かっていく。
『江ノ電』での最後の目的地、「江の島」に向かう。駅から降りて、以前はなかった高層ビルの間の賑やかな通りを数百メートル進む。道路の下をくぐると江の島にわたる橋に架かる。
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江の島にわたるのも何十年ぶりのことか。西を見れば運よく富士山が顔をのぞかせる。
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島の中はずいぶん様変わりしてしまった。以前は《縁日》に出る露店のような土産物屋が、今は立派な店になっている。
時間がないので、エスカレータ乗り場の所で引き返すことにする。
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江ノ電で再度、鎌倉駅まで戻り、横浜駅で『タンメン』を食べ、大急ぎで京都に戻る。
あわただしい小旅行だったが、『東慶寺』と『極楽寺』を訪れ、何よりも妻が『江ノ電』に乗ったことを子供のように喜んだのが良かった。
【おわり】
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