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最近上映されて良かった映画、以前見て心に残った映画、感銘をうけた本の自分流感想を。たまには旅行・山行記や愚痴も。

『食の戦争-米国の罠に落ちる日本』-GM食料を武器にTPPを巧みに操り、食料の世界制覇をもくろむ米国

2013-11-25 00:44:40 | 世の中の状況について
                                        【2013年8月刊】   鈴木宣弘著 文春文庫


 『筆者は、農林水産省の国際企画課で、農産物の国際需給の逼迫問題、そして農産物をめぐる国際交渉に関わった経験から、農産物物の国際需給動向の分析や農業政策。とりわけ、農産物貿易自由化の影響などの貿易政策の評価に関わる研究を主たる研究分野としてきた。』(本書【はしがき】P-8)人物であり、この道(食糧政策)の専門家であり、党利党略の政策を述べる立場の人ではないのであるが、この本の内容を知ったら、政府自民党(特にその頭目である安部首相が中心)が進めようとしているTPPを始めとする対米従属的政策の内容が、いかに国民を欺き、どれだけ屈辱的で反国民的でめちゃくちゃな内容なのかが理解できる。

 もともと、100%の貿易自由化-例外無き関税の撤廃-を求めるTPPなど、農業団体をはじめとして各団体からは猛反対の声が上がっていた。その後、徐々にTPPの内容が漏れてくるにつれて、その"危険な仕組み"、アメリカを中心とするグローバル企業のたくらみが明らかになってきた。

 
 著者のこの著作の意図は本書『はしがき』に端的にまとめられている。(全てを通して抜粋したいが、長くなるので割愛するが、【文集文庫】のホームページで《立ち読み》できる

 この本で、《現代の世相》を斬るキーワードは、『今だけ、金だけ、自分だけ』である。

   『関税撤廃などの貿易自由化を含め、国の内外を問わず叫ばれる「規制緩和を徹底すれば
   全てうまくいく
」という主張も、経済学の初歩的な論理を「今だけ、金だけ、自分だけ
   の人々とそれに付随した人々の利益のために「悪用」しているように思われる。
    とりわけ、こうした動向の中で、いま食の安全に関わる様々な不安がある。TPP(環
   太平洋経済連携協定)をはじめとする貿易自由化や規制緩和の徹底は、食の価格競争を激
   化される。・・・中略・・・端的に言えば、人の命、子どもたち、我々の子孫の健康を蝕
   んでまでして儲けて何になるか
、ということだろう。』(P-8~9)

   
   『また、食料問題には、食料の質の安全性の問題と同時に、量の確保の観点からの食料の
   国家安全保障上の重要性がある。・・・・』
   『・・・・アメリカの食料戦略の一番の標的は、日本だと言われてきた。・・・』
   『「食料は軍事的武器と同じ【武器】であり、直接食べる食料だけでなく、畜産物のエサが
   重要である。まず、日本に対して、日本で畜産が行われているように見えても、エサをすべ
   てアメリカから供給すれば、完全にコントロールできる。これを世界に広げていくのがアメ
   リカの食料戦略だ。」(米の大学の授業での講義内容)』(P-9)

   『我々は原発事故でもおもいしらされたはずだ。目先のコストを惜しんで、いざというときに
   備えて準備しなかったら、とんでもないコストを払うことになる。』
   『確かに国内で農作物を作るとなれば、アメリカやオーストラリアに比べてコストは高くつく。
   しかし、高いからといって、全てを安い輸入品に任せておけばいいとなったら、いざというと
   きにどうなるのか。』
   『2008年に食糧危機に見舞われた。・・・輸出規制により、お金を出しても他国がコメを
   売ってくれない事態になれば、日本国民は基礎食料を失うことになりかねない。
    結局、自由貿易の利益について論議する際には、そうした長期のコスト意識が含められてい
   ないのである。食糧自給を放棄して他国に委ねれば、食料の確保が危うくなりかねない。食料
   は人々の命に直結する必要財
なのである。』(P-11)

   『・・TTPによって「今だけ、金だけ、自分だけ」に走る人々が、食の安全性や安全保障を
   軽視し、国民の命と健康を危険にさらしかねない事態が進行している。』(P-11)

   『食料に安さだけを追求することは、命を削ることと同じである。』(P-13)

      (以上、本書『はしがき』より抜粋)


 この『安全性とコスト』についての、補足記事が別のところにある。紹介すると、

   『その一端を紹介すると、訪れつつある危機とは、次のようなものです。食料自給率が10%台まで低下し
   (現在は39%と先進国の中でも最低レベル)、スーパーで買う食材に占める遺伝子組換え食品の割合が高
   まり(今も大豆食品や食用油などに多く使われている)、アメリカ基準にならって遺伝子組換え食品の表
   示義務が撤廃され、農薬の安全基準もが緩和され、国産が多くの安い輸入品にとって代わられる結果、安
   全で高品質な食品を買い求めるには、よりコストが高くつくようになるといった現実です。』
    (【本の話web】の著者自身の『インタビュー記事』より抜粋)


     『著作者自身による本の話』-のブログ記事     





 以下、本書に沿って順番に見ていきたいが、内容が豊富で、量が莫大である。

 『目次』を見ればだいたいの内容の検討つくが、具体的には本の中身を実際に読んでもらう方が手っ取り早い。
   (岩波新書のように、この本の出版社のホームペジには、便利な「内容紹介」の項目がない。せいぜい『目次』だけでも付けてもらったら良いのだが、無いので手で打とう(入力する)とも思ったが、それももシンドイので、スキャンしたモノを掲載することにする。


                                                          
                             
   





 この本だけを読んで、《それは1つの意見であって異なる見解もあるとか》、《机上の空論だけでは決着が付きにくい》というなら、少し海外に目を向け過去を検証すれば、どんなひどいことになったかの悪しき先例はいくらでもあった。TPPと似たようなお隣の韓国がそうであるし(米韓FTA P-148)、


 《1.2%の農家の利益を守るために、98%の利益を犠牲にできない》という意見について。

 震災で漁師が海に出られなくなったら漁師が困るだけでなく、捕れた魚を加工したりする関連産業も打撃を受ける。つまり地域の産業が連鎖的に潰れてしまうのだ。それと同じように、農家がつぶれたら農作物が作れないだけではない。
 農業が成り立たなくなれば土地が荒廃する。田畑が無くなれば自然も壊される。
 食料だけの問題ではないのだ。



                                          


 『GM食品の安全性』や『原発問題との関連性』などについては、映画『世界が食べられなくなる日』で詳細に扱われている。



     
     
          『(株)貧困大陸アメリカ』-のブログ記事へ


     
          『続・貧困大陸アメリカⅡ』-のブログ記事へ





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