【2015年9月25日】 京都 TOHOシネマズ二条
なかなかいい映画だった。
映画を見て、「いいな」と思うのは、何度も言ってきたことだが、未知の体験ができることである。
未知の体験には、行ったことのない知らない国の異文化に触れることや、自分では絶対行くことのできないヒマラヤのピークやアルプスの絶壁に立つことや、あるいは極寒の地や逆に南太平洋の天国みたいな場所にも自分の身を置いた気分になれることもある。
この映画の場合は、同じような世界で、違う境遇に置かれた人生を、場合によっては自分たちも同じような立場になるんではないかと、ふと思いながら想像できることである。
酒に入り浸った嫌われ者の年寄と、夫の浮気で離婚に追い込まれた母親についてきたいじめられっ子の交流。制度こそ違うが、日本でもありうる光景である。
日本はアメリカの社会の仕組みの悪弊を追っているような状況が多い。だから痛みを感じるところに共通するところが多く、共感できるのである。
最近「アメリカ映画」が面白いなと感じるのは、そんんところに理由があるのかもしれない。ただし、ここで言う「アメリカ映画」というのは「ハリウッド映画」のことではない、-「インディペンデント系の映画」のことであるが。
一方、北欧の映画やフランス映画の場合、どこか問題意識がずれるのだ。社会制度が一定進んで、人々に日本やアメリカの庶民が感じる《悩みがない》と、緊張感がなく、どうでもいいことでもめて、人間が退屈してしまうというか、人が鍛えられることが少なくなってしまうように感じる。
ある面、逆境や不幸は、人に考え悩み、喜怒哀楽を与え、人としての存在感を感じさせるものかと思ってしまう。
深刻な話は別として、この映画は楽しく、後味のさっぱりした映画である。ビル・マーレイもいいが、ナオミ・ワッツがこんな演技もするなんて、驚きだし、すごくよかった。
『ヴィンセントが教えてくれたこと』-公式サイト