【2011年7月19日】 MOVIX京都
またまた、藤沢周平の時代小説の映画化である。
山田洋次の『たそがれ清兵衛』に始まり、何作目だろう。山田洋次だけでも、あと『武士の一分』、『隠し剣・鬼の爪』があり3作品。そのほか、『蝉しぐれ』(2005年、黒土光男監督)、『山桜』(2008年、篠原哲雄監督)、『花のあと』(2010年、中西健二監督)、『必死剣 鳥刺し』(2010年、平山秀行監督)があり、そして今回だ。
『その木戸を通って』というのも最近(1~2年前?)見たが、あれは藤沢周平でなく、山本周五郎だったか。
いずれも観たが、やはりなんといっても『たそがれ~』である。
一番最初で印象深いというのもあるかもしれないが、脚本が綿密だし、物語の中身がかっこいいし、変化に富んでいるし、泣かせる。
で、今回の映画。
舞台は一連の作品と同じく、遠く『月山』を望む山形県庄内地方の、物語上の架空の藩、『海坂藩』。藩命により藩きっての剣客、朔之助に与えられた使命は妹の田鶴が嫁に行った親友の佐久間森衛。
負けん気が強く、曲がったことの嫌いな妹の田鶴が、同じく正義心に満ちていながら、藩を追われる身となった男と一緒になり、脱藩し下総の小川の辺に身を隠す。
兄が自分の夫の『討っ手』と知ったとき、刃向かってくるに違いない、という一般にあり得ない不条理な前提をいきなり持ち出し、『さあ、どうなる』という難題を突きつけ、有りもしない不安をかき立てるやりかたはよくあることだが、そうした映画は見ていて白けてしまう。どうしてそのような事情になったのかを描かなければ、物語は死んでしまう。
その点、佐久間の欠点や、兄と妹の間のわだかまりも描かれ、最終的に親友を討つことになったのか、藩の事情も含め、その辺の事は一応描かれているから、救われる。
感想は。
悪くは無いがワンパターンの感が否めないし、やはり何か物足りない。
『たそがれ清兵衛』がすべてである。
『小川の辺』-公式サイト