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最近上映されて良かった映画、以前見て心に残った映画、感銘をうけた本の自分流感想を。たまには旅行・山行記や愚痴も。

『北岳から塩見岳までを縦走する』-その4 (山行3日目)

2012-01-15 18:17:49 | 山・旅行


             【 2011年7月24日(日曜)】 山行第3日目

 朝、起きてみたら昨日見えなかった農鳥岳(西農鳥)が頂に笠雲をいだいてくっきり見える。こんな景色だったんだ! 表からのっぺり見える農鳥岳よりも、西農鳥岳は思いのほか立派に聳えていた。 



                        
                                【 熊ノ平小屋から見た西農鳥岳 】



 しばらく景色に見とれてから、新鮮な空気を腹いっぱい吸う。木々を渡ってくる空気が気持ちいい。
 今日は、念願の『塩見岳』を登頂する。『熊の平小屋』からアップダウンの少ない尾根道を進んで、『塩見岳』を超え塩見小屋までが予定のコースだ。


 


 実際に行くまでは、間ノ岳から塩見岳までの銃走路は岩峰の連なる尾根道を想像していたが、実際は樹林帯の歩きやすい道だった。
 途中の『安部荒倉岳』はどこがピークか分からないようななだらかな起伏で、振り返ってみて初めて、こんもり盛り上がったところが、それかと初めて分かるような山である。足元だけ見ていると、地元の北山辺りの山道を歩いているのとなんら変わらず、ここが標高2500mを超える高山であることなど全く意識しない。



                  


 そういう意味からすると、どちらかというと自分にとっては何か物足りないが、最初の高山らしい景色を見せてくれるところは『新蛇抜岳』の手前の『小岩峰』である。
 露出した岩が2~3個、縦走路に立ちはだかっているが、穂高に比べたら可愛らしいものである。




 若干のアップダウンがあり、『新蛇抜岳』の脇を巻いていくと、再びのどかな山道である。

 3人連れの外国人が軽やかな足取りで追い抜いていく。
 最近、観光地や繁華街で外国人の姿を見かけるのは珍しいことではなくなった。しかし温泉や自分らが行く旅行先で外国人に会うのは珍しかった。ましてや山で会うことはほとんど無かった。しかも、このコースはマイナーなコースだ。そういえば前日も『間ノ岳』の頂上付近でフランス語を話す外国人にあったが、そのときは他に人も多かったので気にも留めず、そのうち他の登山者にまぎれてどこかに行ってしまったが、自分らとその外国人3人のグループだけだ。言葉を交わすにも、早足で駆け抜けてしまったので、タイミングを逃したと思ったが、しばらく行くと、『北荒川岳』の大崩壊地を見下ろす広いザレ場で、休息しているところに追いついた。

 片言の英語で話しかけてみると、やはりフランスからの人だった。娘夫婦とその母親ということだ。夏休みに1ヶ月の休みをとって日本の各地を巡るという。
 1ヶ月も羨ましいと言うと、横から母親は娘を指差し、「この子は1年も休みを取っている。・・・失業中で。」とジョークを飛ばす。娘は余計なことを言わなくていい、と手を振る。その横でダンナは終始黙って笑顔でいる。


                                         
                                        【 フランスからの登山者-ヴァイオラインと記念写真 】



 こんなところに来るの外国人は珍しいので、どういう予定かを聞くと、『熊ノ平』のキャンプ地にテントを張り、塩見岳までピストンをするという。その後は、能登を回ったり、金沢に行ったりするという。京都には行かないのかと尋ねると、次の日曜日に行くという。今日が日曜日だからちょうど1週間後の日曜日だ。一ヶ月もヴァカンスを楽しめるなんて、何ともうらやましい話。
 立ち寄ったら、メールをくれるようたのんだ。


 雑談の後、3人は出発していった。私らも、後から来た分もうひと休みして出発する。
 塩見岳の方向は斜面の半分から上にガスがかかり稜線は見えない。


      
                    【ガスがかかる塩見岳方面 】

 
                                   



 塩見岳に近づいてようやく高山らしくなってきた。道も岩場が多くなり傾斜もきつくなる。ガイドブックをみると、《この辺から見る『塩見岳』は圧巻である》と書かれているが、残念ながら、目前に迫ってくるはずの岩峰も塩見岳の頂も全く見えない。足元の岩場だけでは迫力不足である。



                   【 北俣岳への中間点 】

 『北俣岳』への分岐に至る道は岩場の登りである。
 ふと、首辺りが寂しいので、探ってみるとひもで首に留めていた帽子がない。今期、日焼け防止のため、6500円も奮発して購入したゴアテックス製の新品だったが、ブッシュを通過するとき、枝に取られたのかもしれない。たった1回の使用で無くしてしまうとは悔しいが、後の祭り。

 その先で、《フランス組》が頂上から戻ってきたのか、行き違う。どうだったか尋ねると、「全然見えなくて残念だった」そうである。帽子の事も、もし見つけたら京都に送ってくれるよう頼んだが、はたして戻ってくるか。
 

                                          



 あえぎながら段差を一歩一歩登っていくと、岩陰のハイマツの繁みから雷鳥のヒナが姿を現した。一羽だけだと思ったら二羽、三羽と次々とあちこちから現れる。
 ヒナはひとに警戒心を持っていないのか、すぐ近くに寄ってきては3、4羽が好き勝手な方向に走り回る。その後ろを親鳥が「クゥクゥ」泣きながら、後を追いかけるが、別々の方向に散らばるので、《避難誘導》にならない。子育ては、いずこでも大変だと思いながら、親の《奮闘》を笑いながら見る。
ビデオに収めれば良かったものを(写真では音声が残らない!)、そのおかしさで、見る事に熱中して、その絶好のチャンスを逃してしまった。


   
             【 雷鳥のヒナ 】

                                  



 雷鳥と別れて、しばらく登るとガスの切れ目から岩峰が覗く。塩見岳かなと思うが、全容が見えないのでよくわからない。





 15分ほど歩くと、『塩見岳東峰』の標識の前に出る。前方を見ると、ガスの中に『西峰』と思われるもう一つのピークが見える。『塩見岳』頂上に到達したが、視界が全くきかない。残念!

                          
                              【 塩見岳東峰 】


 下りは、濃いガスの中、大きい岩が積み重なった足場の悪い急なガレ場を行く。『塩見小屋』は近いはずだが、視界がきかないこともあって、距離感がつかめず、時間の経過もわかりずらい。


                                                          
                                                             【足場の不安定な急なガレ場の下り】


 小1時間かかって、15:00にようやく『塩見小屋』に到着。「どこから来たか」と受付できかれたので、「熊ノ平小屋から今朝来た」というと、「偉く時間がかかったな」といわれる。よけいなお世話だ。
 この小屋は『塩見岳』の直下という絶好の場所にあるが、収容人数が少ないためか、予約制である。確かに狭い。6畳ほどの部屋が1つあるだけである。トイレも変わっていて、専用の回収袋をもらって《おまる》が置いてある便所で用をたし、《収容した袋》を持ち出し、専用の保管箱に入れるという仕組みである。その《回収袋》が、確か100円の実費である。食事の時間もきっちりしていて、規則ずくめの感じである。



                
                      【 ガスに囲まれた塩見小屋 】



 以前、『甲斐駒ヶ岳』に登る途中に利用した『仙水小屋』も食事時間厳守だったし、同じ山行で1泊目に使った『南御室小屋』では、17時近くに到着したら、「お疲れさん」どころか、こっぴどく《嫌み》を言われ、「夕食は簡単なものしか出せない」といわれた。
 北アルプスの山小屋と違って、概して南は、規模が小さいことも関係あるのか、規則に厳しい感じがする。

 暗く狭い小屋の中を出て、表で荷物の整理をしながら夕食時間を待つ。


                                   
                                         【 携行品 】


 食事は順番制である。到着順に、2回から3回に分けて食事をとる。お造りが出される『仙水小屋』や趣向を凝らした『船窪小屋』ほどではないが、山小屋にしては《まし》な食事である。これで、並みの夕食だったら怒るところであるが。


           
                【 塩見小屋の夕食 】

 食事の後は、景色を見る事もできず、することもないので体を拭き、辺りをウロウロ散歩した後は、寝るしかない。午後8時すぎ消灯、就寝。



                                                【 つづく 】





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