【 2016年11月19日 放映 】 テレビ朝日
テレビドラマで、久々に巧みな脚本で丁寧に作られた作品に巡り合い、感動した。
【 主演の渡辺謙と山田太一 】
原作は山田太一、監督が堀川とんこうで、主演が渡辺謙。
山田太一のテレビドラマドラマと言えば、笠智衆主演の「今朝の秋」と「ながらえば」が思い起こされる。いずれもしみじみとした味のあるいい作品だった。テレビドラマではあのような質の良い作品は、もう出来ないものと思っていたが、今回のこの作品に巡り合った。
【 学校の先生と 】
5年前の「東日本大震災」の傷跡がモチーフだ。誰もが、その衝撃の大きさに戸惑い、いまだに心の整理ができていない人が多い。
話のとっかかり、着想が面白いと思った。中学校での「リズムダンス」で踊る一人の女生徒を見て、
『君が一番だ!君が一番美しい!』
と、そのままの感情を女の子にぶつける。何と突飛な行動なのだろう、これから何が始まるのだろう、と思う。
【パン屋の主人に東北から出てきた人の仕事を依頼】
演出は自然で、セリフにも無駄がない。物語の進行に伴い、徐々に背景が明らかにされていく。
【 友達を気遣って 】
市原悦子も渡辺謙ももちろんいいが、中学生・松永亜美役の蒔田彩珠がいい。「変なおじさんが突然言い寄ってきた」複雑な状況を、現代っ子らしく、明るく繊細に演じていた。
【 もう会わないと誓うが 】
物語の展開が見事だ。巧みな構成と自然な脚色で、家族を亡くした人の気持ちが上手に表現されている。
さわやかな感動が静かに心に迫ってくる、後味の良い作品である。
『五年目のひとり』-情報サイト