この映画・本、よかったす-旅行記も!

最近上映されて良かった映画、以前見て心に残った映画、感銘をうけた本の自分流感想を。たまには旅行・山行記や愚痴も。

「生と死の心模様」-圧倒的な存在感

2008-09-29 23:16:38 | お薦めの本
 当時、どういう問題意識でこの本を手に取ったかは忘れた。
 
 当時は自分の子供もまだ小さく問題行動を起こすような年齢に達していなかったし、自分も含め周囲には死に直面するような人間もいなかった。

 もともと精神医学には興味があったが、仕事柄(当時は小学校高学年から中学校の生徒を中心に受験指導の傍ら教育相談のような仕事をしていた)子供を取り巻く状況とその親たちを見てなのか、当時この本の内容にかかわるような事件が頻発して新聞紙上を賑わし、それで興味を持ったのか、よく覚えていない。


 前半は、精神科医の立場から思春期と壮年期の心模様を描写している。

 中盤は「自殺者との対話」でこれはこれで興味深い。

 後半は、精神科医としてというより今に生きる一人の人間としての心の吐露である。

   ○    ○    ○

 どうして、今回17年前に読んだ本を改めて読みたくなったと言えば、2つの死のケースに直面したからである。それと、映画でたびたび遭遇する臓器売買・臓器移植の問題か。

 ずっと以前、自分が死んだら臓器提供するか否かで論議したことがある。理性的にはそれによって人の命が長らえられれば、そうすべきだと思うが、わたしは反対だった。妻が「白バラ会」に登録すると言っても、すぐに同意するわけにはいかないと思っていた。

 本で著者は、脳死の問題、臓器提供・臓器移植の問題等医学上の問題と、そもそも人間の尊厳とは何かという問にたいし自己の体験から率直な感想を述べている。この文章に触れたとき、何かホッとした気分になったのを覚えている。


 自殺について、癌の告知・ターミナルケアのこと、人間の尊厳について-いずれも重たい問題だが、大原健志郎は自らの体験から率直な思いを述べている。
 大切なのは、こうした問題に白か黒か、どちらが正しいのか間違っているか決定的な結論はないということである。その人の価値観にもとづく問題で、著者は自分の意見を強制しようとはしない。


 読み進めていく中で、この本の著者の真摯な態度と医者として、一人の人間としての偽りのない生活実感から発せられる、作り事ではない文章には圧倒させられた。



  

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