【 2016年2月29日 読完 3月5日~ 記 】
読み終えてからすぐに記事を書こうと思っていたが、あれやこれやで1週間がすぎてしまった。
その前に読んだ『雇用身分社会』では、現代の【労働環境】の劣悪さ、それを固定化する【雇用形態】の変容の異常さを示すデータをまざまざと見せられ、《怒り心頭》を通り越して、いい加減うんざりしていたところだった。
新聞の書評欄でこれを見つけ、早速読んでみると止まらない。
『ガラパゴス』という表題は、《ガラ携》と表現されるときの【ガラパゴス島で独自に進化を遂げ、他に類を見ない時代錯誤的な異物】というニュアンスを込めている。これは、この小説の舞台となっている、某自動車会社のハイブリッド車を指すと同時に、そのもとで行われている【雇用形態】の異常さも暗に示しているように思われるように感じた。
小難しい話はやめよう。
『刑事コロンボ』の鋭い観察眼と粘り強い執着心が、ブラック企業、悪の蔓延った労働現場の乗り込んできたような《痛快なストーリ》が展開される。
一方そこに描かれる【労働環境】は現実のルポかと思わせる深刻な内容が記述されているのだが、話の展開巧みさと内容の面白さに引きずり込まれて一気に読んでしまった。
と同時に、『雇用身分社会』を読んだ時とは別の感覚で、現代の世の中の歪んだ現実を思い知らされた。
この著者、なかなかの人である。