この映画・本、よかったす-旅行記も!

最近上映されて良かった映画、以前見て心に残った映画、感銘をうけた本の自分流感想を。たまには旅行・山行記や愚痴も。

『政府はもう嘘をつけない』(堤未果著)で見つけた『パナマ文書』と『アイスランド首相』の意外な関係

2016-08-01 14:37:12 | 最近読んだ本・感想



 土曜日、テレビ番組の『世界不思議発見』で《アイスランドの魅力》を紹介しているのを見ていたら、この本のことを思い出した。「アイスランドが素晴らしいのは大自然だけではなく、国民も政治もすばらしいぞ!」、と。それともう一つ、是非書いておかねばならないことがあった。

 2016年6月2日付けで書いた私のブログ記事に大きいな誤解(軽率な誤り)があった。7月10ひ発売の『政府はもう嘘をつけない』を読んで(実は発売日前の7月8日に読み終えていたが)、堤未果さんの記述で自分の軽率さを悟った。

 その部分とはこうだ。

 「パナマ文書」がパナマの法律事務所「モサック・フォンセカ」から何者かによって「南ドイツ新聞社」に持ち込まれてからのことだ。情報量の膨大さに「南ドイツ新聞社」だけでは手に負えないとみて、外部の組織に調査を依頼するわけだが、その依頼先が何とも怪しいのだ。
 『ICIJ』という組織だが、堤未果氏の本によると、その本部はワシントンにあり、創設者のチャールズ・ルイスはアメリカ人で、その運営は実質的にアメリカ国防省傘下の「USAID(米国国際開発庁)」や米系多国籍企業などで運営されているという。
 その『ICIJ』が独自に分析し、彼ら自身で取捨選択してデータのみが、世界に向け公開されたのだという。
 だから、そのリストを見ると、ロシヤや中国、シリアにイギリスにアイスランドなど、《アメリカにとって政治的に邪魔な顔ぶればかり》である事実は否めない、と堤未果は指摘する。(同書『プロローグ』

 ここまでは、『ICIJ』がどんな組織であるかという点を除けば、一定ありうる話として想像できることである。問題はその後にある。

 顔写真入りの「パナマ文書に登場する有名人」を掲載したのだが、その中に「アイスランド元首相のグンロイグソ」の名前があった。この本を読んで、「プーチン」「ポロシェンコ」「習近平」など一癖も二癖もある政治家やその他の《大物》・《大企業代表者》と同列に並べている写真がいかに不適切であるかを悟った。

                       

 ギリシャが財政危機に陥り、そのたびにIMFの屈辱的な条件を飲んでその支援を受け入れるかどうかのニュースは全世界に報道され知らない者は居ないくらいだが、アイスランドが同じような危機に陥った時に、ギリシャと違う道を選んで見事に立ち直った話はほとんど報じられず、自分も含めて知る人は居ないか、ごく限られた人が知るのみである。

 その「なぞ解き」が同書の第4章にある。(P-239 〜)

 アイスランドの危機は1990年代のオッドソン首相の時代に始まったという。フリードマンの新自由主義を信奉した首相は国内の様々な分野を《民営化》するにとどまらず、金融緩和をしてアイスランドを《タックスヘイブン化》したという。さらに中央銀行総裁になったオッドソンは金融の自由化を推し進め、ヨーロッパの投資家から巨額の資金を集め、その結果、3大銀行の総資産は3年半でGDPの10倍にまでは値上げ、通貨は対ドルで60%上昇、株価は9倍に跳ね上がったという。その後どうなったかは、アメリカ本土のバブルがはじけたように悲惨な結果が待っていた。
 2008年に当時のホルデ首相が「国家破産宣言」を出し、ギリシャと同様、50億ドルという莫大な負債をもって破たんしたのだ。

 その後の処理がギリシャと全く違っていた。

 『アイスランドの行った金融・経済改革は、従来のものとは真逆だった。輸出産業でなく国内産業に、金融ではなく医療や教育等の社会的共通資本に予算が惜しみなく投じられていく。』(P-252)

 「鍋とフライパン革命」を終わらせないという運動が、自分たちの国を作るための「憲法改正作業」に向かわせる。一部の人の暴走で国の人を困らせないよう、「政治とカネの癒着解消」が何よりも強調されるように。

 その中心にいた人が、「国民的人気から何度も再選を繰り返しているグンロイグソン首相」だったのだ。

 『だが、アイスランドのこの革命は、欧米メディアで徹底的に無視された。・・・中略・・・ずっと沈黙していた欧米の商業マスコミがアイスランドを大々的に取り上げたのは、それから8年後の2016年6月4日、《パナマ文書》で名前を暴露されたアイスランドのグンロイグソン首相が辞任するというニュースだった。』(P-257)

 『グンロイグン首相の辞任ニュースが欧米メディアに流れた直後、釈放されたのは、2008年に・・金融危機の責任を問われ、刑務所に入れられていた銀行家たちだ。5年の契機のうち。まだ1年しかたっていなかった。』((P-258)

 
 一面的な報道しか見ないと、どんな偏ったり理解しか得られないかを思い知った場面だった。

 この本には、まだ他にも示唆されるところが沢山ある。改めて紹介しよう。

            ○            ○            ○


 折しも、日曜日の晩、投票箱が閉まるや否や、「小池百合子、当確!」の報が入ってきた。やっぱりと思いつつ、票の開きの大きさにがっかりする。

 『ポケモンGO』の狂騒、呪縛を解いて、多くの若者を含む《支持政党なし層》が《無関心》や《政治的無知》から「自分らの立ち位置を確認する」方向に向いてもらうには、根本的に「国のあり方」、「教育」や「マスコミのあり方」を根本的に変えないと、どうにもならないような気がする。アイスランドの教訓を生かすために、【何をすべきか】をつい考え込んでしまう。


 


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