花言葉:「調和」
暑さ寒さも彼岸まで。春の陽ざしが燦燦と輝き始めるころ、先人たちは冬の栄養不足を補う生活の知恵として、田畑に生える草、「七草」を摘み「お粥」にして食べて滋養をつけた。その風習は現代にも脈々と受け継がれ、今ではスーパーなどで七草をパックして売っている。私は毎年食べることはないが、ふと思い立ったように「七草粥」を食べたくなることがある。
凍てつく寒さもゆるみはじめたころ、咲きはじめる紫紅色の筒状の唇形の花をつけるのが「仏の座」、何とも優しく可愛い花だ。
『君がため 春の野に出でて 若菜摘む
我が衣手に 雪は降りつつ 』(古今集 光孝天皇)
春の七草は平安時代に四辻善成左大臣が詠んだと言われる『芹なずな 御形はこべら仏の座 すずなすずしろ これぞ七草』という和歌があまりにも有名で、緑の少ない初春、土筆と共にこれらの草花が春風にささやかれるように芽をふく。この和歌は左大臣の作と言われる一方で「詠み人しらず」とされている。
仏の座はシソ科とキク科の2種類がある。
一般的に知られているのがシソ科のようで、高さ10~30cm。畑地に多い二年草で花は紫色をしている。茎を取り囲んでつくようすを蓮華座(れんげざ)に見立てこの名が付いたという。子供のころは花びらを抜き取り、蜜を吸ったことがある。また、ギリシャ語の「laipos(のど)」が語源で、葉の筒が長くてのど状(喉仏)に見えることに由来するとの説もある。が私は前者を支持したい。
この草は見つけることが容易でみんなこれが春の七草と思っているようだが、実のところ七草として食用にしている仏の座は、高さ10~20cmほどで、田畑に多くなる二年草で花の色は黄色。呼び名は「コオニタビラコ」(小鬼田平子)といいキク科で、これが春の七草で言う「仏の座」である。若い葉を食用としている。ロゼット状の葉が地面にへばりつくように生えていることからなかなか見つけられない。花が終わると果実は丸く膨らみ下を向く。
《俳句》
◇「犀川のほとりに沿へば仏の座」(鷹羽狩行)
◇「七草のひとつ足らぬは仏の座」(小林輝子)
◇「夜は海が近づくといふ仏の座」(中尾寿美子)
◇「日のひかりひとときとどき仏の座」(山口 速)