「嵯峨に来て思ふは遠き君のこと 秋の女と呼ぶ人のこと」(吉井勇)
竹林の参道が美しい鹿王院は、臨済宗の禅寺。もとは、泰暦2年(1380)、足利3代将軍義満の師でもあった春屋妙葩(しゅんおくみょうは)が、義満24歳のときに長寿を願って建てた宝幢禅寺(ほうどうぜんじ)鹿王院の開山塔院だった。春屋妙葩は夢想疎石の高弟、中国にまでその名をとどろかせた禅僧で、天竜寺、南禅寺、東福寺、相国寺の住持を歴任し、禅宗寺院を統括する初代の僧録に任命され、政治面でも大きな力を発揮していたようだ。
山門から中門までは天台烏薬(てんだいうやく)の銘木が茂り、苔も綺麗な参道。山門には義満の筆による「覚雄山」、客殿には「鹿王院」の扁額が掲げられている。客殿、本堂、舎利殿は廊下で結ばれていて、舎利殿には源実朝が宋から将来した仏牙舎利を収めた多宝塔が安置されているという。この舎利殿を中心に本庭が広がり、嵐山を借景に三尊仏が配された枯山水庭園である。日本最初の平庭式の枯山水庭園といわれ、鹿王院は臨済宗の単立寺院であるだけに、やはり禅宗独特の雰囲気がある。
特に目立つものがある訳ではないが、石と苔と奥行きのある庭が広がり、それまでの平安仏教に基づく浄土庭園とは趣が異なるようだ。
瓦を埋め込んだ土塀に挟まれた山門の奥は紅葉、松等の木立が振りかかった鬱蒼とした参道。両脇に苔に覆われ、左脇には竹林が見え静寂が保たれていた。客殿は障子戸が閉まり外観のみで、その右側に舎利殿があり、前には樹高5m程の三角形の端正な樹形をした樹齢400年のモッコク。
客殿の奥、黒い平瓦の回廊を進むと本堂、応永鈞命絵図、釈迦如来坐像、十大弟子像等が安置されていた。応永鈞命絵図は応永33年(1426)作の原本を元禄年間に模写したもので、嵯峨一帯の絵地図とのこと。釈迦如来(像高50cm程)、十大弟子像(40cm程)は運慶の作と伝わるもので壇上に安置されている。
本堂の奥、舎利殿には1m四方の厨子が安置されていた。厨子の内部には多宝塔があって、その中に仏牙舎利(釈迦の歯)が収められているという(非公開)。扉・側壁の金箔は所々剥落していたが、斗組の龍の彫刻の彩色は鮮やかだった。厨子の周囲には四天王像。仏牙舎利の上の天蓋に描かれた丸い龍の図も鮮やかだった。仏牙舎利の背後には涅槃図、堂の周囲には掛軸が16幅掛けられている。
所在地:京都市右京区嵯峨北堀町24。
交通:京福電車嵐山線「鹿王院」下車徒歩5分、市バス11系統「下嵯峨」下車、徒歩3分。
竹林の参道が美しい鹿王院は、臨済宗の禅寺。もとは、泰暦2年(1380)、足利3代将軍義満の師でもあった春屋妙葩(しゅんおくみょうは)が、義満24歳のときに長寿を願って建てた宝幢禅寺(ほうどうぜんじ)鹿王院の開山塔院だった。春屋妙葩は夢想疎石の高弟、中国にまでその名をとどろかせた禅僧で、天竜寺、南禅寺、東福寺、相国寺の住持を歴任し、禅宗寺院を統括する初代の僧録に任命され、政治面でも大きな力を発揮していたようだ。
山門から中門までは天台烏薬(てんだいうやく)の銘木が茂り、苔も綺麗な参道。山門には義満の筆による「覚雄山」、客殿には「鹿王院」の扁額が掲げられている。客殿、本堂、舎利殿は廊下で結ばれていて、舎利殿には源実朝が宋から将来した仏牙舎利を収めた多宝塔が安置されているという。この舎利殿を中心に本庭が広がり、嵐山を借景に三尊仏が配された枯山水庭園である。日本最初の平庭式の枯山水庭園といわれ、鹿王院は臨済宗の単立寺院であるだけに、やはり禅宗独特の雰囲気がある。
特に目立つものがある訳ではないが、石と苔と奥行きのある庭が広がり、それまでの平安仏教に基づく浄土庭園とは趣が異なるようだ。
瓦を埋め込んだ土塀に挟まれた山門の奥は紅葉、松等の木立が振りかかった鬱蒼とした参道。両脇に苔に覆われ、左脇には竹林が見え静寂が保たれていた。客殿は障子戸が閉まり外観のみで、その右側に舎利殿があり、前には樹高5m程の三角形の端正な樹形をした樹齢400年のモッコク。
客殿の奥、黒い平瓦の回廊を進むと本堂、応永鈞命絵図、釈迦如来坐像、十大弟子像等が安置されていた。応永鈞命絵図は応永33年(1426)作の原本を元禄年間に模写したもので、嵯峨一帯の絵地図とのこと。釈迦如来(像高50cm程)、十大弟子像(40cm程)は運慶の作と伝わるもので壇上に安置されている。
本堂の奥、舎利殿には1m四方の厨子が安置されていた。厨子の内部には多宝塔があって、その中に仏牙舎利(釈迦の歯)が収められているという(非公開)。扉・側壁の金箔は所々剥落していたが、斗組の龍の彫刻の彩色は鮮やかだった。厨子の周囲には四天王像。仏牙舎利の上の天蓋に描かれた丸い龍の図も鮮やかだった。仏牙舎利の背後には涅槃図、堂の周囲には掛軸が16幅掛けられている。
所在地:京都市右京区嵯峨北堀町24。
交通:京福電車嵐山線「鹿王院」下車徒歩5分、市バス11系統「下嵯峨」下車、徒歩3分。