いわき市のおやじ日記

K流釣り、K馬、そして麺食いおやじのブログ。
山登り、読書、映画、陶芸、書道など、好きなことはいろいろです。

「夜が明ける」

2024年07月26日 | 

重くて暗い内容でした。

手首を切るところなどは、冷静に読むことができませんでした。

「夜が明ける」という題なので、最後は明るく終わるのだろうと思いながら読んでいましたが、微妙な暗さを残したまま終わりました。

 

15歳(高校生)の時、「俺」はアキ(男性)と出会い、親友になります。 アキは長身で暗い顔つきで一見強そうですが、吃音で母親にネグレクトされていました

アキは高卒で劇団に入り、「俺」は大学卒業後、テレビ制作会社に就職します 。

しかし、アキは慕っていた劇団の主宰から「怖い」と言われてしまいます。「俺」はADとして寝る時間もないような状況で働きますが、ディレクターから罵られたり、タレントからハラスメントを受けたり、理不尽で超ブラックです。

二人とも少しずつ心身を壊していき、貧困の中でなんとか生活を続けますが…。

著者は小泉今日子さんとの対談の中で「政治が国民にどう向き合うべきかということを書いたつもりです」と話していらっしゃいました。

ヤングケアラー、貧困など、普段あまり意識したことがありませんでしたが、この小説の「俺」やアキのような若者はいるだろうし、日本にも貧困はあります。

小泉さんの言葉を借りますが、自分が何もしなくても国や経済は成長するのが当たり前で、政治や日本という国のありようについて深く考えなくても生きていける、と思っていました。

でも、苦しんでいる若者がいるということにもっと目を向けなければいけないと強く思い知らされました。

 

以下、印象に残った文章をいくつか。

 

世界に目を向けてみろよ。どれだけの不幸がある?飢えと貧困に苦しんでる子供達。体を売らなければならない女達。戦争で命を落とす男達。俺たちは、そんな人間達の不幸の上にあぐらをかいているんだ。最近の若い奴は甘いよ。仕事がしんどければすぐ辞める。上司にしごかれたらすぐ辞める。それは贅沢だよ。仕事を選んでる時点で、そいつらは恵まれてるんだ。無事に学校に行って、命が脅かされない状態で勉強が出来るだけで、恵まれてるんだ。

 

この世界には、誰にも知られていない不幸がある。
自らに与えられた環境に疑問を持つことが出来ず、ただただ現実を受け入れるしかなく、慢性的な、もはやその怒りで自分自身を殺してしまいかねないほどの怒りを抱えながら、生きていくしかない存在。

 

日本礼賛番組が増えたのも、彼らの存在が大きいと言われている。高度経済成長期を経験した、つまり「頑張れば必ず上向きになる」ことを信じ込まされてきた彼らは、日本の経済がどう頑張っても傾き続けていること、日本の「国力」が弱まっていることを受け入れられない。だからか、日本の職人技や技術が世界で称賛されているのをみると安心する。世界において日本が「さすが」と言われているのを見たいのだ。

 

でもいつからかな。恨むことが負けだと思うようになった。恨んでたら、恨んでる側が弱いんだって。
強い人は恨まないんでしょう?弱いから、弱さの中にいるから恨むんでしょう?
誰かの、世界の優しさを信じられないのは、その人が弱いからなんでしょう?

 

500ページを超える長編でしたが、わりと早く読み終えました。重いですが、読みやすい小説でした。

次は夏らしく明るい小説を読もうと思います。

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ビブリオバトル

2023年10月27日 | 

先月末、ビブリオバトルというものに初めて観戦者として参加しました。

いわき市文化センターで行われた「第9回ビブリオバトル福島県大会浜通り地区予選会」には、17名の高校生が発表者として登壇しました。

原稿を見ずに、大勢の観戦者の前で5分間話し続けるのは緊張しただろうし、何度も練習したことと思います。

本の感想に優劣をつけるのはなんだかなぁとも思いましたが、単純にどの本が一番読みたくなったかだけを考えて投票しました。

2分間の質問タイムでも発表者は誠実に答えていて、好感が持てました。

たぶん一番多く質問したのは私だと思います。

予選、決勝戦を経て、優勝と準優勝は私の一押しと二押しに決まり、優勝したのは「バールの正しい使い方」を発表した松本さん(新聞発表されているので名前を出しました)。

面白そうだったので読んでみました。

「嘘」をテーマにしたミステリーです。

主な登場人物が小学生で、暗さはなく、むしろ優しさや愛しさに溢れる物語でした。

そーか、バールってそういうことだったのか、って読み終わった時に理解できます。

 

総務省統計によると、本の出版数は文学だけで年間約13,000冊。1ヶ月に1,000冊以上です。

この中から面白そうな本を選ぶのはなかなか難しいので新聞の書評などを参考にしていますが、これからはビブリオバトルもいいなと思いました。

 

ところで優勝した松本さんを含め、発表者17名中3名は四倉高校生でした。

かつてこの学校には20〜30回ほど訪問しましたが、階段の踊り場にある掲示板には図書室にある本の案内があって、私も立ち止まって読んだりしていました。

松本さんも「バールの正しい使い方」を手に取ったきっかけは「お勧めの本だったから」ということでした。

この学校の司書の方々の努力が優勝に繋がったのかもしれません。

令和8年には平商業と統合して閉校になってしまいますが、この伝統は残ってほしいと思います。

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「何者」

2023年09月08日 | 

 

主な登場人物は5人。5人とも大学生で就職活動をしています。

主人公はその中の一人(男性)で、物語は一人称で語られます。

5人はSNSでさまざまなやり取りをしますが、主人公は、5人のうちの同棲している男女の就職活動の仕方やSNSの発信内容に、鬱陶しさとかいらだたしさを感じていきます。

おそらく多数の読者も、主人公と同じような感覚を持ち始めることと思います。

最初はちょっとした不愉快さですが、徐々に大きくなっていきます。

そして最後、読者自身に大きく跳ね返ってきます。それが鳥肌もの。

この作者の構成、感性、文章表現、どれも素晴らしく、別の作品も読んでみたいと思いました。

印象に残った文章を挙げます。

ほんとうにたいせつなことは、ツイッターにもフェイスブックにもメールにも、どこにも書かない。ほんとうに訴えたいことは、そんなところで発信して返信をもらって、それで満足するようなことではない。

 

ほんの少しの言葉の向こうにいる人間そのものを、想像してあげろよ、もっと。

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「やめるときも、すこやかなるときも」

2023年08月28日 | 

コロナだから特別にすることもなく、読書が進みます。

喉が痛くて眠れないので、昨夜は1時40分まで読んでいました。

疲れた体に、こういう大人の純愛物語は生きる希望が湧いてきていいものです。

私は本を読みながら、自分が映画やドラマのプロデューサーになったつもりで、配役をどうするかを想像することが多いのですが、主人公の男はちょっとチャラいが仕事を熱心にする32歳の独身なので、どうしてもジャニーズ系を思い浮かべてしまいました。

そしたらすでにこれ、ドラマになっていたんですね。

案の定、藤ヶ谷太輔くんがやってました。

ヒロインの奈緒さんもイメージにぴったりです。

主人公が高校生の時、思いを寄せていた真織さん役は誰だったんだろう。

南沙良さんがいいかなと思いましたが、ドラマでは中井友望という方でした。

知らない方ですが、この方もいいなと思います。

 

印象に残った文章は、主人公が東京のビルの屋上から下を眺めるところ。

 

屋上からは人間が作り出したさまざまな建物が見えた。その建物の中にたくさんの人がいて、それぞれが違う人生を生きている。日々起こる喜怒哀楽、人から見れば取るに足らない小さなことで、真剣に苦しんだり、泣いたり、怒ったり、時折人を恨んだり、そんな感情の泡立ちすら、ここに立って想像すると、愛おしいものに思えてくるのが不思議だった。地上から遠く離れた高い場所にいるせいだろうか。

 

山に登ったときに、下の街の様子が見えると、今そこに住んでいる人たちは何を考え、何をしているんだろう。一生懸命何かに取り組んでいる人もいれば、ぼんやりくつろいでいる人もいるだろう。人の営みってなんだかすごい、なんて考えることがしばしばありました。

上の文章では「感情の泡立ち」という見事な表現をしています。さすが直木賞作家、と思ったところでした。

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「鍋に弾丸を受けながら」

2023年02月08日 | 

食もの、旅ものの漫画です。

これらのテーマは語り尽くされた感はありますが、一味違います。

世界を渡り歩く私(釣り人)が、5万点の味を振り返ると言った内容で、斬新で奇抜で奇怪千万です。そしてめっちゃ面白いです。

表紙に騙されそうになりますが、登場人物はほとんど男です。

無骨な男どもを含め、登場人物が全て美少女姿で描かれているところも独創的。

2巻までしか出ていません。早く次が読みたい!

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