ねじ式連結器
「screw coupling」の直訳で、「ネジ式連結器」や「螺旋(らせん)連結器」とも呼ばれる。連環連結器の改良型で、車両に付いたフックに車両に付いた鎖で止めるという構造は同じだが、この鎖の中央部分がねじ棒で長さを変えられるようになっており、これによって引き出し時の衝撃が起きにくくなっている。
連結器は車端中央に配置されて引張力を伝達し、推進力は車端に配置された緩衝器(バッファー)を介して伝達される。バッファーは標準軌においては車端中央に設けられたフックの左右に1基ずつ設置される(2本バッファー方式)が、この構造では急カーブを曲がれなくなるので、ノルウェーで急カーブを想定した1067mmの狭軌路線開業時に中央に1本だけバッファーのあるセンターバッファー方式が考案され、ナローゲージ(南アフリカ・ニュージーランド・インドネシアなど)ではこちらが主流になっている。(日本は例外的に2本バッファー方式
なお、日本でも私鉄ではセンターバッファー方式を伊豫鉄道(現 伊予鉄道)が採用しており(車端中央のフック直上に1基のみ設置という形式)、またセンターバッファー方式でもイギリスのウェルシュプール&サンフェア軽便鉄道 (Welshpool and Llanfair Light Railway) やマン島鉄道 (Isle of Man Railway)、などの「中央にバッファー・左右にリンクorねじ式連結器1本づつ」などの例がある、他にも2本バッファーならぬストックトン&ダーリントン鉄道の「フックは中央だがバッファーが逆台形に4つ」という4本バッファーの例もある。
連環連結器と併結が可能なことを生かし、螺旋連環連結器として両者を同時にかけることもあり、1900年以前から客車の写真の多くが、一方に螺旋連結器、他方に連環連結器を装備している状態だったが、日本の国鉄では1900年10月の鉄道建設規程第42条でこれを正式として「車両の連結は総て複式連結の装置とし、その一は螺旋連結器とを要す」と定められ、片方の車両からのみ鎖をかけた場合や双方かかっていても連環連結器同士では連結してはいけないことになり、一方から螺旋連結器を相手のフックに掛け渡して締めつけたあと、さらにその上から他方の連環連結器を(螺旋連結器側の)フックに掛ける手順になった。
この方式は万一螺旋連結器が破損しても連環連結器により列車分離事故を防ぐことができるが、作業が二度手間になることや、車両の螺旋連結器を装着している側と連環連結器を装着している側が対向していなければならないといった制約がある。この手間が後の自動連結器への付け替えの一要因ともなった。
日本では1925年に全国一斉に自動連結器への交換が実施されたため、ねじ式連結器はほとんど使用されていない。国鉄等で標準的に採用されていたバッファーを左右に装着するタイプの連結器は、博物館明治村に動態保存されている明治時代の蒸気機関車・客車で、現役の姿を見ることができる。また、2001年には、伊予鉄道が開業時の蒸気機関車と客車を模した「坊っちゃん列車」の運行を開始し、車端中央部に1基のみ緩衝器を備えるタイプが復活した。
ヨーロッパ全域と中東地域のトルコ、イラン、シリアの大半やアフリカのエジプト、チュニジア、アルジェリア、モロッコなど数ヶ国、南米のアルゼンチン、ウルグアイ、パラグアイの狭軌路線以外とチリの一部車両では21世紀の現在も、ユニット編成の電車や高速鉄道車両を除き広く使用されている。
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