庭の花たちと野の花散策記

山野草と梅が大好きの「雑草」。花以外は思考不可の植物人間の庭の花と野の花散策記です。

徳川ミュウジアム松の後継樹つくり余談 ダイオウショウ テーダマツ モミの発芽

2020年09月25日 | たのしい自然観察

2018年11月播種 2019年2月発芽 テーダマツの2020年9月現在の姿

拡大して見てみると、葉が3本束生しているのがわかりました。これはテーダマツに違いないと確信しました。

 さて、
 2018年のことです。樹木医の方から徳川ミュウジアムの松の後継樹を作る話があるというので、どうしたものかとお話しがありました。
 後継樹なら、接木か実生苗を作ることになる。そこで接木と実生苗つくりの知恵をもった私が盆栽の師匠と仰ぐ盆栽屋さんを紹介しました。
 前年、2017年にミュウジアムの展示物を見学した時に、回廊でこの松の木の説明を見ていました。
 「ミュージアムの新館と本館をつなぐ回廊前の中庭の中央にある「松」は、第13代当主國順(くにゆき)の弟でサンフランシスコ条約調印の全権委員であった徳川宗敬(むねたか)によって記念に持ちかえられたもので、静かに年輪を刻んでいます。」とあり落ち葉を見てダイオウショウであると確認していました。
ところが、いざ後継樹をとなり、あらためて樹種を確認すると、ダイオウショウとテーダマツの2種が1本ずつあることがわかりました。

左奥の回廊側がダイオウショウで、右手前がテーダマツです。 人影からもいかに大きな松の木であるか想像できます。推定樹齢は約70年。テーダマツは特に成長が早く、またマツノザイセンチュウにも強いということで日本でも研究されています。
 テーダマツの種の採取時期を検討するためにネット情報を見たら「受精した雌花は翌年の春に球果を熟す。球果は乾燥によって開閉を繰り返し種子を散布する。」と春に熟すとありました。日本の松が秋に熟すのとは違うのかと迷いました。そこで森林研究所にメールで問い合わせたところ、「米国の文献情報では、テーダマツの種子は10月中旬頃から11月に散布される。種子採取の時期は、球果が開き始めた頃に採取する。日本のアカマツやクロマツでもほぼ同様の時期に種子が散布される。研究所では、10月以降に種子を採取する。」との回答をいただきました。
 急いでミュウジアムと日程を調整してもらったところ11月21日と決まりました。ミュウジアムの中庭に入るとダイオウショウは盛んに種を散布していて、風に乗ってひらひらと落ちてきている最中でした。

ダイオウショウの種。中央は落ちてから日にちが経過したと思われる。
 しかし、テーダマツは散布時期が過ぎたのか、やや古びたマツカサが落ちているだけでした。何度も来ることは難しいので、その場で落ちているマツカサから種を取り出し、また落ちた種を探してみました。

テーダマツの種探し。

芝生や茂みを丹念に探して見つけたテーダマツと思われる種

 これらの種を早速鉢に蒔いたところ、ダイオウショウはほぼ1週間で発芽しました。


発芽したダイオウショウ。
 ところがテーダマツは全く芽が出てきませんでした。じつはダイオウショウも種を採取した翌日に蒔いた種は発芽したのですが、数日後に蒔いた種は発芽しませんでした。
12月7日にはテーダマツの種を再度さがしましたがすでに時期を失していたため、発芽有望な種は見つかりませんでした。そのあとで後継樹の苗木を植える候補地を検討するために、一般人は入ることができないミュウジアムの森に入りました。


テーダマツの種探し。

森に入り後継樹植栽場所検討。下は偕楽園の窈窕梅林と月池、四季の原。
ダイオウショウの実生苗は順調に成長していましたが、テーダマツの今シーズンの発芽はないかもしれないので、来シーズンに種を採取することにしました。

ところが、ダイオウショウとは雰囲気が微妙に違う発芽が1月と2月になってからありました。画像はそれぞれ発芽後ほぼ1か月のものを並べて比較しやすくしました。

ダイオウショウの実生苗 背が低い。初生葉が小さくほとんど見えない。

2月に発芽。    背が高い。初生葉がよく見える。・・・このあと葉の先端の2裂でモミと判明。残念。


3月に発芽     背が高いが、初生葉が小さくほとんど見えないところはダイオウショウ似。
もしかしてテーダマツかもと期待がかかったが、5月になったらアカマツのような感じになってしまった。

5月 残念全く別物か。
テーダマツが失敗したので、再チャレンジすることになりました。

 そこでテーダマツのマツカサの採取時期について、後継樹を請け負った樹木医とミュウジアムで都合の良い日を決めていただいたのですが、互いに忙しくて都合がなかなか合わずに8月末に決まりました。ちょっと早すぎると思ったのですが、大丈夫だろう、ダメなら改めてもう一回採取しようということになりました。

2019年8月 テーダマツのマツカサ採取
採取したマツカサを乾燥して種を採ろうとしたのですが失敗でした。やはり早すぎたようです。そこで再度マツカサ採取を試みたのですが、日程打ち合わせに手間取ったり、決めた日が雨降りだったりして困ってしまい、ついには実生苗をやめて苗木を購入すうよう申し出ることになってしまいました。
ダイオウショウは発芽後の成長が遅く、茎は発芽時から数年はほとんど伸びないので、実生苗を植栽するまで数年かかること。また植替えを嫌うので、苗を購入したほうが確実であることから提案したもののようです。

せっかく後継樹つくりということで意気込んでやってきたことがすべて無駄になってしまいました。盆栽の師匠にこのことを連絡して浮かない気持ちになったわけです。


そこでふと3月に発芽した実生苗を見ていたら、今年出た葉が何と3本束生しているではないか。もしかしてこれはテーダマツ?
 
 テーダマツの実生苗はダイオウショウの実生苗に風情がよく似ているのではとの間違った先入観があって、これはテーダマツの可能性は全くないと勘違いしていました。今更ながらネットでテーダマツの実生苗を探してみたら、ダイオウショウとは全く姿が違って、3月発芽苗の現状の姿によく似ていました。

更に2年前の写真を眺めていてびっくりしました。ダイオウショウもテーダマツも葉が3本束生しているのですが、
ミュウジアムの落ち葉の中にはかなりの頻度で4本束生が混じっていました。

4本束生の落ち葉
 ダイオウショウとテーダマツには4本束生の葉はよくあることなのか。それとも滅多にないことなのか。
もし後者だとしたらミュウジアムのダイオウショウとテーダマツはかなり珍しい木であう。それを普通のダイオウショウとテーダマツの苗を購入して後継樹としてしまうことは誠に残念なことである。
今さら苗木を購入しないでとも言いにくいことだろうがいかがなものだろうか。


 
 






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2 コメント

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Unknown (kazuyoo60)
2020-09-25 07:10:44
>葉が3本束生
特別な松なのですね。
知識豊富でいらっしゃるから、お気持ちが徳川ミュージアムの方に伝わればと思いました。
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残念 (雑草)
2021-02-28 09:53:39
全く残念でした。師匠ともども沈みそうです。
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