表題のアウターライズとは、陸地から見て海溝の向こう側で起きる地震とのことですが、
冒頭の津波への鮮やかすぎる対応から、クーデターを煽るような展開になるのだろうか、
と思いながら読み進みました。
ストーリーは、登場人物たちが硬くなったり、軽くなったりと、テーマのわりに変化に富んでいて
読み易いものでした。
ダ・ヴィンチニュースの著者インタビューでは、現地で土木作業員をしながら少しずつ書き進めていたものを
まとめて小説にしたとの事です。
日本の素材産業も多くある東北地方との事ですが、現地の人たちが大手企業でもいかに低賃金で働いているかは
知りませんでした。
現地での作業員体験と、それまでの会社経営者という2つの異なった体験が生かされているのでしょう。
震災や津波を前面に押し出していますが、現代の日本社会全体をテーマにした小説なので、
歴史や哲学を知ることの意味が良く解る小説です。