本書の第4章で取り上げられているフランシスコ・ヴァレラの言う、
主体が環境の中に存在するのではなく、行為によって主体と環境が存在し始める、
と言うのは、河合俊雄氏の言う、最初の数字は2とか、竹中菜苗氏の言う、主体が発生するから
対象も発生するというあたりと似ているのが興味深いところでした。
京大の臨床心理の人たちが影響を受けているW・ギーゲリッヒ氏は’42年生まれとのことなので、
ヴァレラの著作やオートポイエーシスに関することに影響を受けていそうです。
やはり臨床でクライアントを前言語的なところから扱うには、主体や内面のあるところから考えても難しいのでしょう。
織田尚生氏の述べていた、『変容的逆転移』というのも、言語以前のところで相互の主体が曖昧になることで
治療が進展することについて取り上げていたのでしょうか。
主体や内面、そして様々な境界の曖昧な自閉症スペクトラムに関わるのにも、言語レベルのみでは難しいのでしょう。