マチンガのノート

読書、映画の感想など  

「マン・ダウン 戦士の約束」ディート・モンティエル監督、シャイア・ラブーフ他

2017-11-13 23:36:02 | 日記

アフガンへ派兵された、米海兵隊員のその後の話。

精神科医の中井久夫氏が訳書で早くから紹介しているように、

PTSDは前言語的なところまで影響する。そのため本人も

合理的、整合的な行動の基の部分まで不調をきたす。

そのことにより、家族などの身近な人まで傷つける、危害を加える、

またはそのようなことを自ら恐れて関係を断つことも多いようだ。

そのことからサポートを受けられなくなったり、ホームレスになったり

する人も多いのだろう。

本人が負傷しなかったとしても、戦友が負傷、死亡したりすることも

PTSDの主要な原因となるとのこと。

「帰還兵はなぜ自殺するのか」(デビッド・フィンケル著)でも書かれているように、

帰還兵のPTSD患者の数が多すぎることもあり、薬物療法がメインで、

十分な治療、サポートを受けるには程遠いようだ。

岡野憲一郎氏がブログで書いているように、20年以上前から

PTSDで働けなくなって、メディケアの対象になっても、

社会保障制度の弱さのため、財布に2,3ドルしか入っていない人は

ざらにいたとのこと。そうなると通院自体が困難になり、

治療を受けることも不可能な人は、以前から大勢いたのだろう。

米国民の尊重する、選択の自由とその結果は自ら受け入れるべきという

価値観は、すでに破綻しているのではないだろうか。

参考文献:中道態の世界 意志と責任の考古学:國分功一郎

参考動画 https://www/youtube.com/watch?v=I6di0oGTU9I

     https://www.youtube.com/watch?v=o_l4Ab5FRwM


「フレンチ・ラン」ジェームス・ワトキンス監督

2017-11-09 23:38:22 | 日記
パリに住むアメリカ人スリ師の青年と、CIAの対テロ捜査官のはなし。
80年代から2000年代のアクション映画なら、巻き添えで亡くなる人は
単なる背景扱いだったが、この映画では、スリ師の青年が、
知らずに行った行為で4人の人が亡くなったことで、
自責の念に駆られて、怖がりながらも屈強な対テロ捜査官に不承不承
協力する。
欧米などのテロや乱射事件、警官によるアフリカ系市民の射殺などの影響で、
そのような事件の被害者に対して、単なる背景ではなく、かけがいのない人としての
見るようになってきたのだろう。
それにしても劇中、若者のデモ隊がが権力や金融機関、企業などに対して
大規模なデモを行い、警察隊との衝突をする場面は、ヨーロッパの若者の、
社会への不満を表明し、自ら変えていこうという姿勢が
いかに日本と違うかが表現されているのだと思った。

「ザ・バンク 堕ちた巨像」 クライブ・オーウェン,ナオミ・ワッツ

2017-11-09 21:52:54 | 日記
いろいろな紛争地に武器が供給されていて、というのは、
売り手以外にも、武器の購入資金を貸したり、輸送を許可したりで、
いろんな国や人が絡んでいる。
自分たちの影響力を行使し続けるために
自分たちの影響力の及ぶ範囲で、そのような仕組みを
維持したがるのだろう。
ニコラス・ケイジの「ロード・オブ・ウォー」と同じような
話となるのだろう。
紛争もその当事者の支払い能力によって「査定」されて、
いくら位の支払い能力があるかによって、どれくらいの武器を売ったり
するのかを決められる「案件」として扱われるのだろう。

ことばと知に基づいた臨床実践:ラカン派精神分析の展望 河野一紀

2017-11-05 01:14:38 | 日記
発達障害の治療に関しては、患者は治療者に対し、
何らかの知を想定した主体としてとして見ないので、
治療者も患者と並行して、発話そのものを受け取る対話者として
始めることが必要になるとのこと。
そのことでうまく話せない、聴けないということをそのまま認め、
そうしたつまずきに開かれた発話の場を維持することが必要とのこと。
そのことで回避されている欠如やそこから由来する不安を喚起することによって、
患者の発話に関する分裂を露にさせ、意味へとは回収されない
次元に作用することが目指される必要があるとのこと。
そのことにより、患者の「葛藤」とでも呼ぶべきものを構築する
ことにつながるとのこと。
そこから患者は治療者を他者として意識し始めるとのことである。
治療者と患者の非対称性ではなく、対称性からはじめ、
患者の支えとして位置づけられる他者としてあらわれる
ことを目指すことが必要とのことである。