長年、精神科救急医療に関わってきた著者の書いたものだが、
第六章の「戦陣精神医学」の章が特に興味深かった。
米軍の経験と研究において、戦場でのメンタル・ブレーク・ダウンへの対応は、
「素早く近く」が何よりも重要で、それは日本の精神科救急医療でも同じとの事だったが、
今の日本で近く関わることが出来る医師は少なそうである。
学校での勉強が得意、というのと近く関わる事に関しては相性が悪そうである。
また、レイテ沖海戦での栗田艦隊の反転に関しては、戦後に様々な研究があるが、
栗田中将は当時、三日ほどほとんど寝ていなかったことから、本人の思考能力が
ほとんど停止していたのだろうと指摘は説得力があった。