ジョン・ル・カレのシリーズ物の小説の一作を映画化したものです。
派手なアクションなどはありませんが、西側のイギリスや東側のソ連も、
目的のためなら周囲を騙したり、関係ない人を死なせたりと、
冷え冷えとした展開が続きます。
当時は冷戦下で、「核爆弾がぶら下がっていた」時代なので、人命に無頓着な部分が
大きかったのでしょう。
さらっと惨殺された死体を映したり、無関係な人が巻き込まれて死んだりと、
背景描写で冷たい世界を映像化しています。
実際に、イギリス情報部の幹部がソ連の価値観に共感していて、
色々と情報を流していたそうですが、そのような重要省庁の幹部クラスは
上流階級出身者が占めていたとのことで、その人たちにとっては、
実際に外国で潜入などをするような人は、自分とは違う人たちという感覚だったのでしょう。
社会階級の固定や様々な格差の影響が大きそうな話です。
レヴィナスに関しては、他の解説書を少し読んでも解らず、放り出していたが、
こちらは結構解るように書いてあった。
レヴィナスの主体論を解説しているが、ラカンなどと違い
主に2者関係での主体の生成についてのレヴィナスの考察が紹介されているので、
臨床家には大きな価値がありそうである。
ラカンのものは記号や図形などを使って解説しているが、本書は言葉で解説しているので、
こちらにとっては解り易かった。
レヴィナスは独特な用語の使い方をしているが、それについても解り易く解説してあった。
2者関係での主体の生成と発達に関心がある人にはお勧めの一冊。