世の中にはかなりの数で、夫や親に暴力を振るわれたり、大怪我を負わされたりしても
その家から脱出したり逃げ出したりということを考えつかない妻や子がいるようです。
そのような事例に対応する相談機関や心理士は、様々なシェルターや支援施設、
公的制度の実態を知っていて、来談者が希望していなくても、
使うとしたらどれを使おうかなども考えて対応するのでしょう。
そう考えると、どのような支援制度を知っているかというのは、
心理士などがどの学派を学んだかよりも、来談者への影響が大きそうです。
日本に臨床心理学を定着させた河合隼雄氏たちですが、そちらの方の著書を読んでも、
時代的なこともあり、暴力の影響などについて書かれたものは少ないようです。
そのためその後の京大などの臨床心理の方達も、そちらの方には詳しくないのかもしれません。
大学の相談室に来談するという人たちは、その時点でそれなりに恵まれた人が多いので、
暴力が関わる事例が少ないのかもしれません。
そのため来談者が何らかの暴力の影響を受けていても、それが見えないことが
多いということもありそうです。
そのように考えると、信田さよ子さんたちの臨床は、大学の相談室などで臨床をする人たちに
これまで見えていなかった視点を提示しそうです。