マチンガのノート

読書、映画の感想など  

フリークスアウト  監督 ガブリエーレ・マイネッティ 出演 クラウディオ・サンタマリア アウロラ・ジョビナッツォ ピエトロ・カステリット 感想

2023-03-25 22:12:00 | 日記

イタリア人がアメコミ物的な設定で作った映画ですが、独特の物になっていました。

【あらすじ】

第二次大戦中のイタリアで、ユダヤ系のイスラエル率いる小さなサーカス団のメンバーたちは、

虫使いの青年、磁石人間のピエロ、毛むくじゃらの怪力男、電気を発する少女、などで、

アメリカに移住するために団長にお金を預けますが、彼は帰ってきません。

電気少女は彼を探しに行きますが、他のメンバーはドイツの運営するベルリン・サーカスへ向かいます。

そこを率いるフランツは、指が6本あるためドイツ軍に入れず、ナチスドイツの役に立つ特異能力者を探しているのでした。

【感想】

物語の設定は、アメコミ的なところもありますが、歴史が長く、第二次大戦では戦場にもなったイタリア人が作った

映画なので、そこに住んでいたユダヤ系の人たちがナチスに連れて行かれるなど、何かと重い設定となっていて、

いろいろと物悲しい内容の映画でした。

それぞれが自分の特異な能力を使いますが、なかなか何かと上手くいかないところが良かったです。

意外なところはパルチザンとドイツ軍の戦闘シーンなどが、結構しっかり作ってあったところです。

特異な能力を持つ登場人物が出てくる設定の映画でも、それぞれ作った人の文化というものが

何かと影響することが伺える映画でした。

「フリークスアウト」

 


生成と消滅の精神史 終わらない心を生きる  下西 風澄 文藝春秋 感想

2023-03-24 16:34:51 | 日記

人の心というものが、古代において個人の「内と外」両方に在るものだったのが、近代に至り、

「内」に在るものと捉え方が変わり、さらに現代ではまた「内と外」両方に在るものと捉え方が

変遷してきたことを解りやすく解説しています。

多くの資料を使い解りやすく展開してゆくので、哲学や歴史に詳しくない読者にも読みやすい内容です。

人間の心というものや、人工知能について考えるのにも役に立つ内容です。

これまで人間は、主に物理的な能力を機械に委ね、様々な事をしてきましたが、

これからはどの様な能力を機械に委ねるのでしょうか。

鼎談 吉川浩満×下西風澄×山本貴光 心はどこから来て、どこへ行くのか 文學界4月号 | インタビュー・対談

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『生成と消滅の精神史 終わらない心を生きる』(下西 風澄)心の三千年史を考察した『生成と消滅の精神史』を上梓した下西氏と心と脳の問題を探究してきた山本氏・吉川氏が...

本の話

 

 

 

『生成と消滅の精神史 終わらない心を生きる』下西風澄 | 単行本

若き俊英が鮮やかに描き出す、人類と心の3000年。 古代ギリシャから西洋哲学の歴史を紡ぎ直し、認知科学、さらに夏目漱石へと至る。若き独立研究者が切り開く、心と人類の...

文藝春秋BOOKS

 

 

 


シンプル・フェイバー 監督 ポール・フェイグ 出演 アナ・ケンドリック ブレイク・ライブリー 感想ネタバレ

2023-03-22 23:47:34 | 日記

 

【あらすじ】

シングルマザーのステファニーは、キャリアウーマンのエミリーと仲良くなり、

秘密を打ち明け合うようにまでなります。

しかしエミリーが行方不明になり、ステファニーは自分のブログを使って彼女を探し始めるのでした。

そしてエミリーが溺死体となり発見されます。

【感想】

サスペンスコメディの映画ですが、アナ・ケンドリックが演じるお人好しの役により、

内容がテンポよく進んでいました。

ブレイク・ライブリーは結構冷血な役柄ですが、そこが軽く描かれていることで、

内容が重くならずに展開していきます。

重い内容のサスペンスに飽きた人にオススメかと思います。

軽めのサスペンスコメディとしてうまく出来た作品だと思います。

映画『シンプル・フェイバー』


黄色い家 川上未映子著 感想 主体の生成と絡めて

2023-03-17 23:26:29 | 日記

本書は読売新聞で連載されていた小説が、単行本として出版されたものです。

最近よくいろいろな所で話題になる貧困に関することや、知的・精神的な偏りのことや毒親問題などを

盛り込んで、’90年代後半を舞台に書かれた小説です。

著者の川上未映子さんは容姿に恵まれた人ですが、大阪の北新地のクラブに勤めていたとのことです。

夜の世界に身を置いていたことで、学校に行っていたり昼間に働いていると目にしない様々な人を見たことも、

本作を書く上で役立っているのでしょう。

ここでは本書を「主体の生成」という観点から見て感じたことを書いてみたいと思います。

【あらすじ】(ネタバレあり)

主人公の花は、風呂なし、共同トイレという安アパートでスナックのホステスの母親と暮らしています。

母親は稼いだお金は箱に入れ、必要なときに出して使っていて、花もそこから必要なお金を出し使っています。

花は学校の成績は良くありませんが、不良グループとつるむこともなく、距離を置いていますが、

向こうからはからかわれたりします。

母親のアパートで出会った黃美子さんが、その不良たちと何かやり取りした後に、不良たちは

花をからかったりしなくなったことで、花は黃美子さんに一目置き、惹かれていきます。

高校に入った花は母親から離れるためのお金を貯めようと遮二無二にバイトを頑張りますが、

貯めたお金を母親の彼氏に盗まれます。

そのときに黃美子さんに再会し、花は母親の元を出て黃美子さん暮らしながら飲み屋を始め、嫌な思いもしますが、

それなりに楽しく暮らしていきます。

しかしながら火事で店が焼けたので、花は再び店を開店するためにカード詐欺などをして、

まとまったお金を得ようと頑張るのでした。

【あらすじに見られる主体の生成】

もともと花は普通にバイトをして、少しずつお金をためていますが、そのお金を盗まれたことで、

母親のもとを離れ、黃美子さんと暮らしながら飲み屋で働き出します。

母親の元を離れることを諦めるのではなく、黃美子さんと暮らすことで家を出るというかたちで、

主体的な動きをしますが、学校や普通のバイトでは出会うことのない黃美子さんと出会うことが無ければ、

そうはならなかったでしょう。

そこでそれなりに充実した暮らしをしたことで、店が焼けた際に、それまでの暮らしを取り戻そうと考えて、

黃美子さんとは別にカード詐欺を始めるところでも主体性を発揮します。

そして知り合った蘭や桃子なども使いカード詐欺でもっと稼ぎはじめますが、その二人はそれほど当てにならないので、

花が計画を考え、中心となり詐欺を続けるほど花はしっかりとしていくのでした。

そのあたりで花は、黃美子さんの認知能力の偏りを考え、彼女には詐欺に参加させないということも決め、

他の3人で詐欺を続けていきます。

他の二人は警戒心も薄いので、家の中の規則も花が決め、仕切っていくと言うところにも、

花に主体性が生成してきたことが伺えます。

本書を読んで考えるに、高校や大学などは学力の近い生徒が集まるので、自分とは違うタイプの人と出会うことが少ないことも、

高校生や大学生の主体が生成しにくいことに、繋がっているのでしょう。

日本では他の先進国よりも発達障害と診断される人が多いとのことですが、

学力で輪切りにする入試制度などが、大きな影響を与えているのでしょう。

 

「お金は生死のルールを超越していると見せかける」──作家・川上未映子の死生観と「お金」への思い

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Vogue Japan

 

 


連鎖 黒川博行 中央公論新社 感想

2023-03-14 23:25:47 | 日記

何かとバディ物の多い黒川博行さんの最新刊です。本作も大阪を舞台に二人の刑事を中心に

物語が展開します。

【あらすじ】

大阪府警京橋署に会社社長の夫が行方不明とのことで、妻が届けを出しに来ます。

行方不明なだけでは事件性は低いのですが、一応、形式的に二人の刑事が数日調べることになります。

そうしているうちに、様々な不審なところが見つかり、さらにその夫が車の中で死亡しているのが見つかります。

夫に関わっていた闇金などの関係先などに訊き込みに言っているうちに、どんどんと怪しい点が出てくるのでした。

【感想】

二人の刑事で裏取り捜査を続けるうちに色々と分かってくる展開ですが、その合間の二人の話の掛け合いが

軽妙で、テンポよく進んでいく内容でした。

捜査の合間の様々な食事や麻雀の描写が大きな割合を占め、重くならずに話が展開していくところが魅力ですが、

それでも二人の刑事をはじめ、周囲の警察官たちの責任感と仕事熱心さがしっかりと描かれています。

捜査の話ばかりではなく、捜査中のそれ以外のところもしっかりと描いているところが本作の特徴でしょう。

そのことにより、刑事たちが正義感だけで動いているのではない、普通の人であることが伝わって来る内容でした。

捜査の大きな手がかりとなるNシステムですが、車の移動を監視出来るものなので、

欧米などなら国民はもちろん、法曹界からも受け入れられない制度ではないだろうかと思いました。

そのあたりに関しては、文化や価値観の違いが大きそうです。

 

Nシステムって合法なの!? 身近に潜むナンバー読み取り装置の是非 識者の見解は? - 自動車情報誌「ベストカー」

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