千歳空港で今一番ホットな場所と言えば、『花畑牧場』 の生キャラメル売り場ではないでしょうか?
一見したところ、通路のようなところに面した小さなショップで、賑わい感もあまりなく、「なーんだ、メディアでは大騒ぎしているけど、簡単に買えるじゃん、ラッキー!」と思って店に入ろうとしたら、警備のおじさんに、「すみません、あちらに並んでください」と言われた。「あれれ」と思って、指差す方向に行って初めて状況が飲み込めた。
空港の中に不自然な形で赤いロープが張られ、『最前列』、『最後列』 と書かれた黄色い看板が立てられ、赤いギンガムチェックのシャツを着た田中義剛もどきのお兄さんが交通整理をしていた。
友人は、「私はキャラメルは興味ないから、並ぶんだったらお一人でどうぞ、じゃ、私はあっちに行くので」 と言ってあっという間に消え去ってしまい、一人取り残されてしまった私。並ぼうかどうしようか迷っている間にどんどん人がロープの中に入ってきて、一刻の猶予も許されない。その時に友人の言葉が思い出された。
『迷った時は3つ条件が重なったら買う』
『食べてみたい』、『お土産で喜ばれる』、『ここでしか買えない』 なんだ、簡単に条件クリアだ、よし並ぼう!と心は決まった。
30分ほどで順調に列は進み、『最前列』 の看板が近くなってきた。その時に赤いギンガムチェックが言った。
「えー、今在庫が90個になったという報告が入りました。先ほど7名行きましたので、7名のお客さんが全員10個づつ買うと残りは20個になってしまいます。従いまして、ここから後に並んでいるお客様は買えない可能性があります。新しい商品は5時から販売しますので、5時までお待ち頂ければお買い上げいただけます。」
少しざわざわっとしたが、回りの人達はこの状況を予期していたのか、「1時間ぐらいだったら大した事ないな」、なんて暢気なことを言っている。私はあと1時間もこんなところで悠長に並んでいる余裕はないのだ。目の前では北海道物産展が私を待っているのに、まだ参加すら出来ていない。
そうこうしていたら、赤いギンガムチェックがロープを開けて整理券みたいなものを渡して誘導し始めた。前から4番目に並んでいた私にも整理券が渡され、寸でのところでセーフ!ホッ!いやぁ、キャラメル買うことがこんなに大変なんて。
さっきの賑わい感のない店に行くと、がらーんとした冷蔵ケースの中に、残りわずかな生キャラメルが寂しそうに並んでいた。前の人がキャラメルを自分のかごに入れ終わるまで、私はキャラメルに近づくこともできない。ついに私の番が来た。10個買おうかなと思ったけど、後ろの人が買えなくなると可哀想な気もして、ちょっとだけ遠慮して8個にした。8個にしたのにはもう一つ理由がある。実はこのキャラメルは一箱12個入りで850円もするのだ。8個買っても7000円。信じられない、たかがキャラメルなのに?
8個買って、この際チーズも買って1万円近い散財。満足感と言うより、メンドクサイ仕事をやり終えたような疲労感で、なんか手放しで喜べない。この選択は正しかったのか?もういいや、深いこと考えるのやめようっと。
それにしても一人勝ちとはまさにこのこと。他の店でも生キャラメルを販売しているのに、全く売れている気配がない。きっと味はそんなに変わらないと思うんだけど、やっぱり最初にやったもの勝ちなんでしょうか?
そんなこんなで、大変な思いをして買ってきた生キャラメルですが、単純にやっぱり美味しかった。キャラメルがここまで売れるなんて、商売ってやってみなきゃわからないものなんですね。