リフト下り場から、尾根伝いを歩き始めて1分後、「私はここまでにしておく」と、最初から「リフトで帰ります」宣言をしていた、ばたちゃんが一抜けた。
1分で急に足場の状況が変わってきたのであった。平坦な道はどこにもなく、岩場を登ったり下ったり。「もうちょっと行けば平坦なところに出るよね~」と、リフトから見えたなだらかな道のイメージがまだ脳裏に焼きついてた。
5分歩いたら、状況はますます険しくなってきた。もうこの時点で引き返す選択肢もかなり薄れつつあった。行くも困難、引き返すはもっと困難。
歩いているのは私たち3人だけで、他には誰もいない。
「この道でいいんだよね。間違ってないよね」
「うん、さっきリフトの人が 『尾根伝いをずっと行ってください』 って言っていたから、これで間違っていないはず」
後になって後悔したのだが、私たちは地図で確かめることもせず、「ずっと」というのが、どこまでで、何分ぐらい歩けばいいのかも確認せず、「尾根伝いをずっと行く」、というその情報だけで歩き始めてしまったのであった。
そして言われた通り、ずっと行くと、足場はどんどん険しくなり、行く手にはうっそうとした木々の生い茂っているところが現れ、下るのではなく登っているようにも見えた。眼下に見えるリフト乗り場からはどんどん離れ、「何かが間違っているような気がする」という不安感が膨らんできた。
その時に、草むらの中に、獣道のような、人間一人が通れる幅の道が見つかった。案内標識も何もないし、「これだ」と確信を持つにはあまりにも頼りない道。
「これかなぁ?」
「う~~~ん…」
しばし道を見つめて考え込んだが、見落としてしまうぐらいのひっそりとした佇まいに、確信が持てない。天下の谷川岳から下りる道が、こんな道であるはずがない。
もう少し歩いたら、隊長が「ちょっとここで待ってて。この先に行って確認してくるから」 と勇敢に一人で偵察に行ってくれた。
『やっぱりさっきの道なのかな、それとも先に道があるのか?本当に40分で下りれるの?道が先に見つかればいいけど…』、いろいろ考えていたら、隊長が戻ってきた。
「やっぱり戻ろう。この先行くと、どんどん険しくなるし、どんどん離れて行っちゃうから」
『えー、戻るの?』 さっきの険しい岩場をまた歩くことを考えたら疲れが押し寄せてきた。
「さっき降り口みたいなところを見つけたんだけど、あれが降り口じゃない?きっとあれだよ」
根拠もなくそう言って、もう一度その道に戻ってみたが、やっぱりかなり微妙。
でも隊長の、「よし、行ってみよう」 という言葉で下りることに決定!
道は狭いが、誰かがこの道を作って、ここを下りたことは間違いない。ということは絶対通じているはず。その上方向的には、リフト乗り場の方向に向かっているので下りれるはずである。
実際下り始めたら、さっきまでの岩場と違って、岩のない草むらなので、楽だし傾斜も緩やか。
あー、やれやれ、これだったら大丈夫そう!
「全くさぁ~、案内表示もないし、不親切すぎるよね」
「そうだよね、こんな道、見過ごしちゃうよね~」
その通り、実は、これは見過ごすべき道だったのです。
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