これまで江戸に関する本は、町方の生活を中心に200冊以上は読んでいますが、どうしてもすっきりしないことがありました。
それは、士農工商という身分制度についてです。
武士も町人も同じ湯屋に入り、句会でも同席していた時代の士農工商をどう理解したら良いのかということです。
それが、江戸文化再考(中野三敏著)を読んで、ようやくストンと落ちました。
中野は、西川如見が書いた教訓本である「町人嚢」を引いて江戸の身分制を次のように解説しています。
江戸の人間の場合に、身分というものは中国の儒教的な身分制に沿って、天子、諸侯、卿大夫、士、庶人の五段階に定まっている。
第一に天子でこれは天皇、第二の諸侯は諸大名、第三の卿大夫は老中や若年寄などの幕府直属の役人、第四の士は徳川家の旗本御家人、そして五番目の庶人は庶民。
「生まれながらに六位に準じ給う例なり、公方様の侍の外は、諸家中ともにみな陪臣といふて、又内の侍いずれも庶人のうちなりと知べし。」
侍には二通りがあり、徳川家以外の家の大名の侍たちは、「又内の侍」といって要するに庶民なんだ。
「其外国々の諸侍、扶持切米の面々、いずれもみな庶人なり。」
扶持切米というのは、領地・領民を持たない給料取りの侍のことですが、それは皆庶民である。
要するに、第五番目の庶人の中に士農工商の士が入っているというのです。
侍には、支配階級の侍と非支配階級の侍がいたということですね。
ヨーロッパの封建制や中国の封建制とは異なる江戸モデルの封建制があったということで、ようやくすっきりしました!!!