「志賀原発を廃炉に!訴訟」の第7回口頭弁論が12月2日、金沢地裁で開かれた。
今回のテーマは防災の欠陥を暴くこと。
万が一原発事故が起きても、万全の防災対策の下、周辺住民の身の安全が保障されなければならない。防災の欠陥は原発そのものの危険性であるあるというのが原告の基本的な考えだ。
今回の口頭弁論ではまず3.11当時、福島市に赴任していた加畑弁護士、頼金弁護士から意見陳述をしてもらった。
加畑弁護士
頼金弁護士
福島市は福島第一原発から約60キロの距離にある。志賀原発から珠洲市、あるいは金沢市にあたる距離である。
地震直後、ただならぬ災害だと直感した福島市民はコンビニやスーパーに殺到。あっという間に食べ物や飲み物が店頭からなくなった。水道は止まっており、いきなり食糧と水の確保が生存の必須条件となる。
福島第一原発が爆発するとは思ってもみなかった2人。翌12日に1号機が爆発し14日には3号機、15日には2、4号機が爆発し、空間線量は20μSv/h。市民は遠方への避難を考える。多くの人が避難を始めたのでガソリンスタンドの油は空っぽ。タンクローリーは来ない。新幹線は止まったまま、食糧などの物資を輸送する車両も被ばくを恐れてやってこない。福島市が陸の孤島となった。このとき加畑弁護士の車はガソリンが3分の1、頼金弁護士の車は約半分。一台の車にガソリンを集めて走れるところまで走ろうと考えたという。行政からの指示は何もなく自分で判断しなければならない。
福島市の人口は約30万人。ガソリンはなく、電車も走っていない中、避難指示を出そうにも出せなかったのではないかと指摘する。
なお、このとき福島刑務所には約1500人の受刑者が収容されていた。刑務所職員は避難指示がでたら1500人の受刑者をどうやって移動させればいいのか真剣に悩んでいたという。
単なる大地震の災害とは異なり、原発事故が重なった原発震災の困難さが非常にリアルに語られた。
防災計画では、過酷事故が起きても行政や自衛隊はじめとした防災関係団体が原発やその周辺にすばやく結集して、万全の態勢で事故後の対応にあたれることになっている。いかに机上の空論であることか。
その後、弁護団の方から石川県の防災計画について、周辺住民の被ばくを前提とした内容となっており、住民の健康被害が避けられないことが示される。福島の具体的な実例が頭に残っており、防災計画の重大な欠陥が非常にわかりやすく裁判官に伝わったことは間違いない。
閉廷後、今後の公判の進め方を原告、被告、裁判所で話し合う進行協議の場では、裁判長の方から防災問題についても被告の反論を促す発言があった。裁判所は原発防災も裁判の争点の一つとの認識に立ったということである。
※第7回口頭弁論の詳しい報告はこちら。お二人の意見陳述原稿も近日中に原告団HPにアップされる予定です。
報告集会では、加畑弁護士、頼金弁護士が避難を断念した理由として、殺人事件の国選弁護任を引き受けざるをえなかった事情が話された。その後二人は放射能の恐怖の中、原発事故絡みの多くの訴訟にも関係していくことになる。全国に数多の弁護士がいる中、期せずして貴重な経験をした二人は、その経験を一人でも多くの人に語っていくことも大事な使命だと語る。
次回口頭弁論(第8回)は2月24日(月)午後1時30分から。
次々回(第9回)は4月23日(水)午後1時半からの予定。
北國新聞(12月3日)
北陸中日新聞(12月3日)
朝日新聞(12月3日)
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