2010年4月2日-2
絵画における記号/クレー
「記号は本来、ある対象や意味を指示する「代替物」である。そうであれば、見る者は眼前の記号=代替物からその指示対象や意味へと意識をずらすことになる。この過程はいわば時間のずれや停止を引き起こすのだが、こうした記号のもつ反時間性は、クレーの絵画に時の流れの逆行、回帰など豊かな時間的表情を作り出している。……クレーは記号や文字を用いることで抽象的な絵画に斬新かつ多層的な時間性をもたらしたと言えるだろう。」(前田 1995: 116頁)。
引き合いに出している「都市史からの一葉」も含めて、クレー作品で使われているのは、アルファベットや矢印であって、語ではない。EmmaやMariという語は、おそらく人名であって、猫とかいった類を表わす語ではないから、指示対象や意味へと意識をずらすことにはならないのではないか? 「都市史からの一葉」は、十字や三角があるが、そこからその指示対象や意味を、(したがって?)時間性も汲み取れない。前田(1995)は、どのような時間性を言っているのだろうか?
ここでの鑑賞者の意識がずれることとは、記号を見て過去の経験での何かを思い出すことを言うのか? 反時間性とは、どういうことを指しているのか?
クレー作品と対比されているのは、決定的瞬間を描写することで物語の進行的時間を表現してきたヨーロッパ絵画なのだが、このあたりも不勉強なのでよくわからない。「都市史からの一葉」も含めてクレー作品は要素の繰り返しによる律動があって、それが産む時間性というのはわかるのだが。
池田清彦は、言葉は時間を産む形式である、というようなことを言っていたような気がする。違ったかな?
[M]
*前田不二男.1995.4.パウル・クレー.『世界美術大全集26 表現主義と社会派』: 109-128. 小学館.[ISBN10 409601026X / 19,417円+税].
絵画における記号/クレー
「記号は本来、ある対象や意味を指示する「代替物」である。そうであれば、見る者は眼前の記号=代替物からその指示対象や意味へと意識をずらすことになる。この過程はいわば時間のずれや停止を引き起こすのだが、こうした記号のもつ反時間性は、クレーの絵画に時の流れの逆行、回帰など豊かな時間的表情を作り出している。……クレーは記号や文字を用いることで抽象的な絵画に斬新かつ多層的な時間性をもたらしたと言えるだろう。」(前田 1995: 116頁)。
引き合いに出している「都市史からの一葉」も含めて、クレー作品で使われているのは、アルファベットや矢印であって、語ではない。EmmaやMariという語は、おそらく人名であって、猫とかいった類を表わす語ではないから、指示対象や意味へと意識をずらすことにはならないのではないか? 「都市史からの一葉」は、十字や三角があるが、そこからその指示対象や意味を、(したがって?)時間性も汲み取れない。前田(1995)は、どのような時間性を言っているのだろうか?
ここでの鑑賞者の意識がずれることとは、記号を見て過去の経験での何かを思い出すことを言うのか? 反時間性とは、どういうことを指しているのか?
クレー作品と対比されているのは、決定的瞬間を描写することで物語の進行的時間を表現してきたヨーロッパ絵画なのだが、このあたりも不勉強なのでよくわからない。「都市史からの一葉」も含めてクレー作品は要素の繰り返しによる律動があって、それが産む時間性というのはわかるのだが。
池田清彦は、言葉は時間を産む形式である、というようなことを言っていたような気がする。違ったかな?
[M]
*前田不二男.1995.4.パウル・クレー.『世界美術大全集26 表現主義と社会派』: 109-128. 小学館.[ISBN10 409601026X / 19,417円+税].