生命哲学/生物哲学/生活哲学ブログ

《生命/生物、生活》を、システム的かつ体系的に、分析し総合し統合する。射程域:哲学、美術音楽詩、政治経済社会、秘教

新道展における抽象作品割合/日展における具象作品の分類

2010年04月17日 23時50分53秒 | 美術/絵画
2010年4月17日-3
新道展における抽象作品割合/日展における具象作品の分類

 新道展の2005年と2009年についての分類結果は次の通り。なお、立体作品との区別がつかないことによる算定誤差の可能性もある。また、図録からは、絵画か版画は区別できない。

2005年(第50回)
       抽象  中間  具象  抽象割合
 会員出品数 16   29   49  16/94=0.17
 受賞出品数  1    3    8   1/12=0.08
 会友出品数  5    6   24   5/35=0.14
 一般入選数 10   22   90  10/122=0.08
    総計 32   60   171  32/263=0.12
(会友と一般から受賞作品が選ばれる。
 これらは、会友出品数または一般入選数に含まれていない。)

2009年(第54回)
          抽象  中間  具象  抽象割合
 会員出品数    20   33   43  20/96=0.21
 受賞・推挙出品数  5    6   20   5/31=0.16
 会友出品数     5    8   23   5/36=0.14
 一般入選数     9   18   71   9/98=0.09
    総計    39   65   157  39/261=0.15
(会友と一般から受賞作品や会員または会友推挙者が選ばれる。
 これらは、会友出品数または一般入選数に含まれていない。)

新道展における出品数割合
         抽象  中間   具象     抽象割合
   1990年   37   47   124  37/208=0.18
   1995年   34   47   172  34/253=0.13
   2000年   30   52   177  30/259=0.12
   2005年   32   60   171  32/263=0.12
   2009年   39   65   157  39/261=0.15


 日展の日本画部門と洋画部門について、2009年の図録に掲載されている作品は、日本画部門の1作品を除いてすべて具象作品であった。そこで、具象作品を
  人物(動物を含む)
  室内・静物
  風景
の3つのカテゴリーに分けて、その作品数を次に示す。なお、掲載されているのは、会長、顧問、理事、参事、幹事、参与、評議員、会員、新審査員、特選、のもので、この順に掲載されている。

  2009年    人物  室内  風景  抽象?
  日本画部門   41    5   59    1
  洋画部門    49   11   53    0

 分類は容易であった。つまり、描かれている対象はそれとわかりやすい。また、対象に心象を重ねているといった場合も少ない。

抽象作品割合の変化(新道展の場合)

2010年04月17日 01時39分43秒 | 美術/絵画
2010年4月17日-2
抽象作品割合の変化(新道展の場合)

 新道展とは、北海道全体規模での3つの美術公募団体のうちの一つの展覧会で、道展、全道展についで創立された団体の展覧会である。
 図録にもとづき、各作品について、[抽象、中間、具象]の3分類に同定した。数値にするといかにも客観的にうつるが、同定には主観的要素が入るので、同定する人(の経験や能力とそのときの気分)によっては、作品数の算定にいくつかの触れがあるだろう。会員と会友についてはカラー印刷だが、一般入選については白黒印刷だという差異もあって、同定結果に影響するだろう。また、調査対象を絵画のみに限定するが、版画なども入っているだろう。そして、平面作品と立体作品は分けて収録されていないので、その判断においても誤差がはいるおそれが少しある。
 基準は、
  抽象:種類同定できないパターンまたは幾何学的パターンが描かれているもの、
  中間:種類同定できる物体が描かれているが、かつ、この世界での通常的な配置関係ではないもの(いわゆる超現実主義的な作品やかなり幻想的な作品)。あるいは、色彩と形態のパターンが画面全体にわたって物体種類の同定において不分明なもの(たとえば、物体の境界がぼかしてあったり曖昧にしてあったりするもの)、
  具象:種類同定できる物体が描かれていて、かつ、この世界での通常的な配置関係のもの、
である。
 1990年、1995年、そして2000年についての結果は次の通り。

1990年(第35回)
       抽象  中間  具象  抽象割合
 会員出品数 18   16   48  18/82=0.22
 会友出品数 10    9   18  10/37=0.27
 一般入選数  9   22   58   9/89=0.10
    総計 37   47   124  37/208=0.18

1995年(第40回)
       抽象  中間  具象  抽象割合
 会員出品数 19   17   41  19/77=0.25
 会友出品数 10   10   14  10/34=0.29
 一般入選数  5   20   117   5/142=0.04
    総計 34   47   172  34/253=0.13

2000年(第45回)
       抽象  中間  具象  抽象割合
 会員出品数 17   21   36  17/74=0.23
 会友出品数  5   14   14   5/33=0.15
 一般入選数  8   17   127   8/152=0.05
    総計 30   52   177  30/259=0.12

抽象出品数割合   会員   会友   一般   総計割合
   1990年   0.22   0.27   0.10    0.18
   1995年   0.25   0.29   0.04    0.13
   2000年   0.23   0.15   0.05    0.12
   2005年   
   2009年   

 一般入選数における抽象作品数の割合は、1990年にくらべて、1995年と2000年は半分である。総計においても減少傾向である。
 なお、団体は、その成員によって維持されるので、会員や会友になる制度と運営の有様によって、またその展覧会活動は、入選の様式によって、大きく左右されると予想される。

絵画における具体物の再現度(同定)1

2010年04月17日 00時13分43秒 | 美術/絵画
2010年4月17日-1
絵画における具体物の再現度(同定)1

 具象絵画とは、画面全面が肉眼で見たように描いてあるというのが、極であろう。デジタルカメラで撮って、インクで印刷すれば、絵画とも言える。そこにおける人の制御は、何をいつどのように(枠、角度、レンズの種類、露出、シャッター速度など)撮るかである。標準レンズで撮れば肉眼で見たものと近いだろう。絵具を使うと再現度には限界がいくつもある。
 しかし、類似したものを描くことはできて、一つの基準は、この世界に存在する物体が画面に描かれていることであろう。いわゆる「再現性」も様々な種類と程度がある。
 或る絵画が、具象的かどうかの指標または尺度として、画面における物体の個数または描画面積と類似度の積を考えることができる。ここでは個物の数と各個物がどれだけ似ているかという程度を分けて考えている。このようにするのは、たとえば超現実主義的な絵画とか幻想的な絵画も測定できるようにすめためである。例えば、半分の画面が写実的で残り半分の画面は抽象的だというものも考えられる。あるいは各個物で写実度が異なるかもしれない画面も測定できるようにするためである。
 似ている程度というのは、どのような性質を測るかによって異なる。(また、指標の値の計算式によっても異なる。)

 具体物がどのような種類の物なのかを同定するとき、人のそれまでの経験によっても、或る物体を同定できるかどうかの程度は異なる。様々な個物を見知っているかどうかという、親密度も関係する。そして、われわれの経験する世界は、いわゆる標準的焦点距離のものであり、顕微鏡で拡大したり、逆に望遠鏡で拡大することで経験の範囲を拡大してきた。そのような知識を学んでいるかどうかの種類と程度によっても異なる。
 たとえば、昆虫の皮膚表面の走査電子顕微鏡写真は見ていない人が多いだろう。それは個物のごく一部分でもあり、それが何であるかを言い当てることができる人は少ないだろう。あるいは器官の内部断面である。人によっては、人の脳のレントゲン断層写真は見知ったものかもしれない。分類カテゴリーの学習は、人様々であり、動物の個体全体を見ても、その種類を知っているかどうか、つまり同定できるかどうかは、様々である。たとえば猫類や犬類(自然物)や机類(人工物)は、人の生育過程で見知ったものになり、通常は親密な対象(存在物)である。ペンギンしか見なかった人にとっては、あるいはそのような人々の分類体系のおける、『鳥類』の代表例は、飛行したりする物体ではなく、氷の上をすべったり、(スズメのようにびょんぴょん跳ねるのではなく)ひょこひょこ歩いたり、泳ぐ物体というようなものであるかもしれない。
 したがって、画面において、
  1. 個物と認定できるかどうか(個物の境界の認定にも関わる)、
  2. その個物がどんな種類のものか同定できるかどうか、
という、或る絵画を見て、それが具象的なものかどうかの認定は、上述した要因などに依存して、人様々である。
 しかも、写実性の種類と程度も描き方に依存する。たとえば、この経験世界での物体についての、絵具での対応を、物体の色彩、物体の形態、物体の背景、物体の配置関係、などのそれぞれをどのよう(な種類と程度)に、類似させるか、またどんな種類と程度の精度(粗さ)で類似させるか、様々に変異させることができる。
 そこで、実際の平面作品について分類することにしよう。そして、「写実」から抽象への筋道のいくつかを同定(解明)することにしよう。ただし問題は、写実性とか再現性とかの定義である。realityの訳(現実感、実在感、実在性、実相、など)または解釈が多義的である。この諸意味を、まず、素な関係に分析する必要がある。そうしていくつかの尺度や指標を設定すると議論が混乱しないだろう。