新・徒然煙草の咄嗟日記

つれづれなるまゝに日くらしPCにむかひて心に移りゆくよしなし事をそこはかとなく紫煙に託せばあやしうこそものぐるほしけれ

「カッコイイ!」の連発だったカッサンドル展(落ち穂拾い)

2017-02-19 13:06:54 | 美術館・博物館・アート/本・雑誌

昨日の記事「『カッコイイ!』の連発だったカッサンドル展」の最後に、

ちょっと書き足りない気持ちがあるのですが、

と書きましたが、やはりどう考えても書き足りない! ということで、つづきです。

まずは、自宅のトイレに飾ってあるポストカードから。

これは、沢木耕太郎「深夜特急 第一便 黄金宮殿」を新刊で購入・講読して、愛読者カードを送ったら、お礼に送られてきたものです。
手書き風ですが印刷ですよ。

「深夜特急」ワクワクして読み耽ったものでした。
もともと沢木耕太郎お気に入りの作家でしたし… 

さて、どうしてここで「深夜特急」なのかといいますと、このシリーズのカバーにはカッサンドルの作品が使われているのです。
「第一便 黄金旧殿」には「ノール・エクスプレス」「第二便 ペルシャの風」には映画「第三の男」ラストシーンを思い出す「ラ・ルート・ブルー」「第三便 飛光よ、飛光よ」には「ノルマンディー」がそれぞれ使われていて、未知の世界の旅立つ期待と不安を感じさせる見事な効果を発揮しておりました

そしては文庫本になり、各便2冊づつ分冊されたのですが、カバーにはやはりカッサンドルが使われています。 
埼玉県立近代美術館ミュージアムショップでは、「深夜特急」の文庫本平置きして販売されておりました。(平置きしないと意味がない

普通の書店でも買える本なのに、まるで展覧会グッズのようですな。

ちなみに、私の書架「深夜特急」3冊の右隣りにある「一号線を北上せよ」のカバーもまたカッサンドルで、「ワゴン=リ」が使われています。「深夜特急」新潮社刊)でのアートワークに刺激された講談社パクった?

ところで、「ワゴン=リ」って何?

調べると、「国際寝台車会社 (Compagnie internationale des wagons-lits) 」という鉄道事業者で、「ノール・エクスプレス(Nord Express=北方急行)」を運行していたほか(下図はWikipediaから拝借した両大戦間頃ノール・エクスプレスのルート図)、

かの「オリエント急行(Orient Express=東方急行)」とか、前記2路線に比べて知名度は低いながら「シュド・エクスプレス(Sud Express=南方急行)」といった欧州を縦横に結ぶ国際寝台列車を運行していた会社らしい。

 ところで、「ワゴン=リ」って何?

という疑問が、展覧会の展示でも、図録を読んでも解決できませんでした
「ワゴン=リ」に限らず、昨日の記事に出てきた 「パテ」とか「スピドレーヌ」なんぞも、いったい何のことかさっぱり判らない…。
図録作品解説は、一部の作品を除いて、制作年、サイズ、素材くらいしか書かれていなくて、かなり不親切
展示室内での掲示までは望まないにしても、何のポスターなのか、どんな製品・サービスの広告なのかなど、図録しっかりと解説して欲しいものです。 
このことは、かなり満足できた「カッサンドル・ポスター展 グラフィズムの革命」の中での唯一の不満です。 

   

ところで、「カッサンドル・ポスター展」には、もう1「ノール・エクスプレス」という作品(こちらは原画)が展示されていました。

右に載せた展覧会のフライヤーの下に載っているがそれです。

図録によれば、

板に油彩で描かれた未発行のポスター原画。北方急行の原画としては不採用となったが、後年この構図を踏襲し発展させた《L.M.S.ベストウェイ》を発行している。

だそうで、コンパスの針の穴まで見られる興味深い作品でした。

加えて、縦線背景に沈み込ませた、このレタリングというか、タイポグラフィというか、タイプフェイスというか、、、区別がつかないので、要は字体ステキさ

この作品に限らず、カッサンドルのどの作品も「文字」の形、配置カッコ良くて、網膜強烈に焼き付きます。

極め付きは、右に載せた「メゾン・ドレーにて」かも。

考えてみれば、ポスターというものは、広告主の伝えたいことが、見る人間違いなく伝わるように作られるもの。

ですから、見た人に「いいなぁ、このポスター」と思ってもらうだけでは意味がなくて、ポスターが宣伝する商品やサービスを購入してもらってようやくその役目を果たしたことになります。

だからこその、文字への執着というか、こだわりなのだろうな、と思います。

多くのポスターの巨大さも、「伝える」ための手法なのでしょうな。 

ということは、カッサンドルのポスターは、WEBや写真で観るだけなく、実際に現物の前に立って、1920's~30'sのパリの住民になったつもりで観ないと、多くのものが伝わらないかもしれません。

埼玉県立近代美術館での「カッサンドル・ポスター展 グラフィズムの革命」の開催は3月26まで、その後、八王子市夢美術館に巡回4月7日~6月25日)するようです。
機会とその気がありましたら、是非お出かけください。お薦めデス 

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