『思考停止社会 ―「遵守」にむしばまれる社会―』、2月に読了。郷原信郎著。講談社現代新書。2009年2月刊(2009年4月第六刷)。
本の帯から。「日本の経済と社会を覆う閉塞感の正体/相次ぐ食品企業の「不祥事」、メディアスクラム、年金記録「改ざん」問題、裁判員制度・・・・・・/コンプライアンス問題の第一人者が、あらゆる分野の問題に切り込み再生への処方箋を示す!」 相次ぐ種々の不祥事に対して、メディアの扇動に同調して批判するだけで思考停止しているのではないか、自省する・・・。
「法令、規則、規範、あらゆるものの「遵守」を押しつけられ、思考停止状態に陥っている現在の日本の社会と組織・・・。/・・・/今こそ、何も考えないで「遵守」するという姿勢から脱却して、起きている物事の本質、根本を理解し、認識し合い、めざすべきものを明確にした上で、・・・。/・・・様々な分野で法令・規則や「偽装」「隠蔽」「改ざん」「捏造」の禁止という「印籠」が思考停止を招いている現実について・・・。・・・「遵守」による思考停止のプロセスを検証・・・。・・・「遵守」という考え方から脱却するために・・・」(pp.9-10)。
「無理解や誤解」に基づく「不正確」な不二家報道で、「特にひどかったのは、TBS系の情報番組「みのもんたの朝ズバッ!」」(pp.22-23、p.41、163,166)。「・・・単なる形式的な社内基準違反に過ぎず、しかも、作為的な隠蔽を図ったわけでもないのに、不二家は「隠蔽」を理由に猛烈なバッシングを受け、企業としての存亡にかかわる事態に・・・」(p.23)。
「食品企業として最も基本的な義務」である「食品を安定供給する社会的義務」を負う伊藤ハム。「社会全体の利益という観点から」考える必要があり、「客観的にみて健康被害の恐れがない程度の問題でただちに工場の生産を全面的に止めることが、本当に社会の要請に応えることと言えるのでしょうか」(p.39)。
「このような日本の食品をめぐる報道の異常性を指摘し、問題提起しているジャーナリストもいます(松永和紀『メディア・バイアス ―あやしい健康情報とニセ科学』光文社新書、・・・)」(p.40)。
一級建築士による「耐震強度偽装問題」。「建築確認申請の手控えや審査手続きの大幅な遅延」や「建築が一時的にストップし、住宅着工件数が激減、建築、不動産をはじめ関連業界は大変なダメージ」、「ビジネスの機会を奪う」、「建築不況」(p.46、47)。「建築確認が形骸化していたからと言って、日本の大規模建築物の安全性が低かったということではありません。・・・設計者、施工会社の信用が大切にされ、技術者の倫理観がしっかりしていたからです。/つまり日本の建築物の安全性は、従来から、建築基準法という「法令」や建築確認という「制度」ではなく、会社の信用と技術者倫理によって支えられてきたのです」(p.49)。