『創 (2008年9・10月号)』、9月に読了。
森達也さん『極私的メデェア論』第36回「「死神」騒動」。朝日新聞コラム「素粒子」と鳩山元法相との一連の騒ぎ。オウム関係者の文章を引用したこの森さんの文章に対して、とあるジャーナリストが森さんへ罵声。翌月の『創 (2008年11月号)』にその経緯が。
斎藤貴男さん『「非国民」のすすめ』第38回「学生運動への相次ぐ弾圧」。連載タイトルは、本と同じ名前なのに今更ながら気づく (※1)。
『誘拐』、9月に読了。本田靖春著。ちくま文庫。2005年10月刊。
解説は佐野眞一氏。「吉展ちゃん事件」を取り上げた、「戦後ノンフィクションを代表する傑作」(p.358)、「わが国の事件ノンフィクションの金字塔」(p.361)。「・・・のような誰からも忘れられた人間に何一つ手を差し伸べてこなかったこの国の政治の無策さに、あらためて激しい怒りを覚えることだろう」(p.361)。「高度成長の光がまったく差さない陰画世界の、さらに暗い彩り・・・世間から完全においてけ掘りにされたそうした影の部分に目をこらした作家がいただろうか」(p.360)。非正規雇用で使い捨てていく現在の政治状況下で記者たちはどうだろう?
【本田靖春著、『誘拐』】
警察情報に全面的に依存した記者クラブ批判 (p.350)。新聞に躍る犯人逮捕で「解決」の活字は、「・・・それは社会全般に通じる解決を意味しない。・・・社会の暗部に根ざした病理現象であり、犯罪者というのは、しばしば社会的弱者と同義語であることを私に教えた」(p.351)。そのことを、昨今の事件に際して、現在の記者は学んでいるだろうか? 一方、安田好弘さんが弁護士からの視点として同様なことを述べている。
「新聞は「法と秩序」を否定するものではないが、記者に与えられた役割は、捜査員の職務とはおのずから別物である」(p.351)。本書により、「遺族が「・・・これで犯人の側にもかわいそうな事情があったことが理解できた」(※4 「遺族の応酬感情への共振」) という趣旨の感想を述べられたと聞き、・・・やっと救われた気持ちになった。・・・年来のマスコミ不信を口にされ、それがずっと私の心にのしかかっていたからである」(p.354)。
「何と因果な仕事を、と思いがちである」(p.355)。魚住昭さんの「業」発言 (※5) につながる。
文庫版のためのあとがきの末尾、「きわめて不幸なかたちで人生を終わった二人の冥福を改めて祈りたい」(p.355)。
【森達也著、『視点をずらす思考術』】
第4章「あえてメディアをずらしてみる」。「こうしてメディアは権力を自らのうちに充填・・・鳥インフルエンザの感染元となった会社の会長夫妻を、容赦ない攻撃で自殺にまで追い込み、・・・拉致された日本人に対しての自己責任を声高に唱え、・・・パナウェーブの危険性を煽り、返す刀で・・・タマちゃんなどとニックネームをつけて狂奔 (※1: タマちゃんを食べる会!?) する権力だ。・・・その帰結が今の社会だ。街には監視カメラがはびこり、自衛隊は・・・多国籍軍の一翼を担い、・・・国歌を歌わない教師を処分し、・・・「戦争反対」の落書き・・・建造物損壊容疑で逮捕する社会だ」。(pp.127-128)。
第5章「脱線をおそれないアウトサイダーたち」。魚住昭さん (※2) (p.145。『野中広務 差別と権力』のエピローグにて、野中氏の詰問に答えての (ジャーナリストとして書かずにおれない)「業」発言)・森巣博さん・PANTAさん。
第6章「日々の暮らしのなかのモノの見方」。「結論を先延ばししたっていいじゃないか」(p.174)。
(『上野英信の肖像』)
千田梅二版画『せんぷりせんじが笑った!』(p.58)。森崎和江、石牟礼道子さん (p.61)。石牟礼さん「わたくしにとっての筑豊」(p.95)。若き松下竜一さんとの写真 (p.92)。
南米への農業移住という名の棄民 (p.105)、それは筑豊からも・・・。
町立病院にて1987年永眠、享年六十四 (p.155、171)。
言論の自由に対する勘違いが多すぎる。国会議員、果ては司法まで。「権力者やその代弁者ら・・・それは「言論の自由」の名に値しない。・・・国家権力や多数派、強者に対して反対を表明する野党的存在の自由、少数派の自由、弱者の自由でなければならない」(p.343) (※1: 4回目)。「直方・・・証生さん・・・殺された。・・・それでも怒りも悲しみも口にしてはならない銃後の教訓が存分に”生かされた”言葉を聞いて、・・・菜穂子さんたちを叩き続けた人々やマスメディア、小泉政権の面々らは、さぞや狂喜乱舞していることだろう」(※2) (p.361)。
『カルト資本主義』(※3)・『機会不平等』(※4) で述べられている通りに事態は悪化 (pp.26-28)。
『創 (2008年8月号)』、8月に読了。
『論座』休刊 (説) (その後、講談社の『現代』も・・・)。それ以上に、本号では、「宮崎勤死刑囚 突如執行の衝撃」。
綿井健陽さんの「『自動車絶望工場』体験記」。長岡善幸さんの「ブームの『蟹工船』は実際どのくらい売れているのか」。
雨宮処凛さん「G8サミットと万国のプレカリアート (アキバ犯人含む)」からのの孫引き (pp.92-93、原本は『G8サミット体制とは何か』(栗原康、以文社))。G8サミットの政策のベースは新自由主義。
1. 輸入農産物の自由化 (関税障壁の撤廃など)
2. 公共部門の民営化 (鉄道、郵便、医療、水道、教育に民間企業が参入)
3. 労働の柔軟化 (労働法制の基準緩和、非正規雇用の推進)
4. 規制緩和 (資本規制、安全基準、環境規制などの緩和)
5. 警察国家化 (テロ対策、移民管理の強化)
どっかの国・・・。