【『創』(2009年6月号)】
篠田博之編集長、「意思表示のために真紅に身を包んで・・・/最高裁死刑判決直後に眞須美さんから届いた手紙」(pp.106-111)。「・・・安田好弘弁護士が主張していた「くず湯事件」の事例などは、ほとんど判決文では言及されていなかった」。「動機も解明されず、直接的な証拠は何もないなかで、状況証拠の積み重ねだけで死刑を宣告してしまってよいのか」。判決には、「カレー毒物混入事件の犯行動機が解明されていないことは、被告人が同事件の犯人であるとの認定を左右するものではない」なんて、酷過ぎないか? 弁護人、「・・・多くの疑問があり、この程度の証拠で有罪を認定し、しかも死刑にするのは、近代刑法の無罪推定の原則と証拠裁判主義の原則に反し、あまりにも酷いと言うほかありません」。林健治さん、「・・・くず湯事件は私が進んでヒ素を飲んだのに、どうして妻眞須美の私に対する殺人未遂になるのでしょうか。こんなに確実で明白な殺人未遂でないという証拠があるのに」。鈴木邦男さん(林眞須美さんを支援する会)、「もはや法治国家ではない。疑わしきは罰せずというのはどこへ行ったのか。/マスコミのあり方も問題だ・・・」。
浅野健一教授、「「発表もの」しか書くなと言う「道警裏金追及」地裁判決」(pp.112-117)。リード部分、「かつて道警の裏金を果敢に告発し新聞協会賞に輝いた道新だが、その裏金追及のエースだった記者らが元道警幹部に訴えられたその裁判で、4月20日、とんでもない判決が出たのだった」。「・・・裏金になったと認め、・・・処分した。・・・組織的な裏金作りを一部認め、約9億6000万円を返還した」。それなのに、・・・。「報道被害者」と称する元道警幹部の記者会見では、「司法記者クラブの記者たちは、何も重要なことを訊かなかった。・・・仲間の記者が泥棒をした組織によって「被告」席に座らされているのに、怒りも憤りも感じないのかと、私は苛立った」。「仙波敏郎・愛媛県警巡査部長が3月末巡査部長のまま退職したが、全国でまだ警察に裏金があると言っている」。その仙波さんは、「裏金は『不適切経理』ではなく、犯罪行為だ」と言っている。道新の当時の道警キャップは、「この判決は、当局の発表ものを書くこと以外のことはやるなということだ」。
日野原重明氏と鈴木邦男さんのの対談(pp.118-124)。日本初のハイジャック事件とされる「よど号事件」に乗客として遭遇したそう。ストックホルム症候群。「・・・全く新聞のニュースもいい加減なものだと僕は思いました・・・・僕はあれ以来、マスコミをあまり信用できなくなった。・・・歴史というのは外の人が書いているんです」。
「永六輔[放送タレント]×矢崎泰久[元『話の特集』編集長]のぢぢ対談 第2回/政治なんて知らない」(pp.126-134)。矢崎「・・・毎晩、バーでブランデーを飲んでる坊ちゃま宰相に聞かせたい(笑)」。永「・・・政治家って、世襲するたびにみんな小粒になっているじゃない。・・・政治家というより、政治屋に成り下がっている。「家」と「屋」の差って大きいと思わない? 本来なら「家(いえ)」としてどんと構えるべきとことろ、「屋根」しかないんだから」。矢崎「・・・麻生首相がいきり立って迎撃指令を出していたけど、なんか、鶏小屋の中にいるニワトリが、オリの向こうから近づいてくるネコを見て、コケコケ雄叫びを上げているような感じなんだよね。北朝鮮は、そんなから騒ぎをしている日本を見てせせら笑っているわけでしょう」。矢崎「・・・中川昭一の核武装論は酔っ払いのタワ言だとしても、絶対に許せないよ」。
雨宮処凛さん、「ドキュメント雨宮革命/第19回 ホームレスの定義を巡って」(pp.138-141)。ヨーロッパの路上生活者はホームレス3万人の1割以下らしい。「健康で働ける人がホームレスをしている」ことに大きな違いがあり、薬物やアルコールなどに何の依存症も抱えていないのにホームレス化していることに海外の人々は驚くそうだ。欧米ではアディクション問題で、日本では小さな政府の無策といった「失業問題」。日本が〝見習っている〟アメリカでは、「社会保障の弱い部分を支えてきたのはNPOと教会・・・そこに行けば餓死しないようになっています」と湯浅誠さん。さらに、「アメリカで訪れたスープキッチン(と呼ばれる無料給食所)が料理が30品目も並ぶ「バイキング形式」だったことに驚」いたそうで、支援の規模の違いに愕然。「ホームレスになりやすい国となりにくい国、或いは餓死しやすい国としにくい国があるということだ。失業して家賃を滞納しても家賃補助があったり、安い公営住宅がたくさんあったりする国と、家賃を滞納してホームレス、というのが「仕方のないこと」と容認されてしまっている国。ちなみにフランスでは「冬の間はどんなに家賃を滞納しても大家さんは入居者を追い出してはいけない」という法律があるという。・・・日本の場合・・・大企業が従業員を・・・寒空の下に放り出したわけだが、国が違えば大バッシングが巻き起こり、不買運動どころではすまないのではないだろうか」。北九州方式の酷い例が想起される。「「命」を基準に考えるか、大企業の利益や市場原理を基準に考えるか・・・」。
(都議会議員選について12日18時現在で40%弱、最終的には50%を超えるとニュースが伝えるが、前回よりは良いとはいえ、それで本当に良いの?)
「今月の編集室から」(p.152)。「▼今月の連載 斎藤貴男さんの・・・毎月の定期連載は一応終了です」。何か後味悪い終わり方だな・・・。