[※ 『ふくしま原発作業員日誌-イチエフの真実、9年間の記録』(片山夏子、朝日新聞出版、2020年2月刊、1700円)↑]
(2024年11月11日[月])
あまりに愚かだ。石棺しかない…一体どれだけの作業員に被曝労働させれば気が済むのか? もちろん、核発電回帰・復権など許されようはずもない。しかも、取り出されたデブリは、放射線量があまりに低く、本当に核燃料が溶け落ちてできた「デブリ」ではない模様で、この《デブリから得られる分析結果》には何の意味もない。さんざん労働者に被曝させておいて、《より現実に近い炉内状況が分かる》はずもない。このデブリでは、《廃炉に向けた作業の安全対策やデブリの保管方法の検討に生かす》ことは、おそらく無理。
『●小出裕章さんは《国が福島県に約束した廃炉へのロードマップはただの県民を
ごまかすだけのパフォーマンスであり、…悪質な時間稼ぎであると見ています》』
山下葉月記者による、東京新聞の記事【「耳かき1杯のデブリ」が持つ意義とは 福島第1原発の炉内状況は見えてくるのか 「限界がある」との指摘も】(https://www.tokyo-np.co.jp/article/365464)によると、《「極めて小さいが、デブリから得られる分析結果で、取り出し装置の開発などの知見が得られる」。福島第1原発2号機から初めてデブリを回収した意義について、東京電力の担当者は7日の記者会見でこう説明した。成分を分析し、炉内状況の推定や取り出し工法を決めるために活用するというが、今回取り出したのは「耳かき1杯程度」の微量で、限界があるとの指摘もある》。
相次ぐ問題、被曝事故…《「被曝労働を下請けに押し付けて成り立っている原発という非人道的発電システムの致命的な欠陥があぶり出された」(エネルギー工学専門家・近藤邦明氏)》。さらに、《高線量の被曝リスクを負って働く原発労働者にインタビューした寺尾紗穂著『原発労働者』(2015年6月、講談社現代新書)は、「原発には必ず被爆を強いられる作業員が必要」だというあたりまえの事実と、「その大部分は電力会社社員ではなく、多重下請け構造で雇われる労働者」が担っている現実を表沙汰にすることをはばかる社会構造を告発している》。
長周新聞の書評【『原発労働者』 著・寺尾紗穂/書評・テレビ評】(https://www.chosyu-journal.jp/review/32609)によると、《福島第1原発2号機の溶融核燃料(デブリ)の試験的な採取作業の失敗は原子力発電所がその稼働、非稼働を問わず、また事故処理から廃炉にいたるまで高線量の被曝リスクにさらされた労働者の手作業によって支えられていることを、万人に知らしめることになった》。
『●原発銀座の被爆労働者』
「これはイギリスのチャンネル4によるドキュメンタリーである。
日本のマスメディア、TVメディアはどこまで被爆労働者、
〝原発ジプシー〟の実情を日本人に知らせてきただろうか?
日本の裁判所はどこまでそういった労働者の訴えの声に耳を
真摯にかたむけてきただろうか?」
『●被爆労働者なくして成り立たない社会の正当性とは?』
《結果、明らかに被曝だと実感しても、わずかの金で泣き寝入り。
例え労災訴訟を起こしても暴力と御用学者の証言でもみ消される。
広告漬けの大手マスコミもまともな報道はしない。
こうした実態は、20年も前から写真家の樋口健二氏が『原発被爆列島』
(三一書房)などで告発し続けているが、現在も基本的にその実態は
変わらない(樋口氏監督のテレビ番組
「隠された被曝労働者~日本の原発労働者1」95年。
イギリス Channel4。なぜ、日本でなくイギリスで放映なのか?)》
『●原発被爆労働という〝原発ジプシー〟の労災』
「〝原発ジプシー〟問題を早くから告発してきた樋口健二さんも
出てきます。「鳴き殺し」(被爆アラームのスイッチオフ)など
杜撰な労働実態。結局、梅田さんの労災は不支給となった…」
『●鳴き殺し・被爆労働者』
《●作業をしているのはロボットじゃない
福島原発の事故以来、現場作業で被曝した労働者は何十人何百人に
上るのか? 東電は「特例上限の250ミリシーベルトを超えたのは
6人だけ」と発表しているが、本当のところは誰にも分からない。
いくらでも隠し事やゴマカシのきく世界が原発労働者なのである。
世間から隔離され、隠されてきた原発労働者の実態を37年間
追いかけてきたルポルタージュ問題作が復刊された。
「闇に消される原発被曝者」(八月書館)だ。写真家の樋口健二氏が
嫌がらせや妨害の中、体当たりで原発内部と被曝者に直接取材してきた
ものである》
『●福島第一原発に潜入したジャーナリスト』
「貴重な潜入記である。山岡さんの過去の記事から、こんなに易々と
〝潜入〟出来て良いのかと不安になるし、それは山岡さん自身が
感じられたことではないだろうか。原発作業員の声は、綿井健陽さんら
ごく少数のジャーナリストからしか届けられていないし、東電や
マスコミが取り上げることなどあり得ない状況。樋口健二さんへの
インタビューも注目」
『●「原発崩壊」樋口健二さん写真展』
「アクセスジャーナルの山岡俊介さんの記事…。
原発の安全神話に早くから批判の目を向けてきた樋口健二さん。
下請け原発労働者の被曝問題にも早くから取り組んでおられた。
そのような被曝労働や労働者なくして成り立たない社会や
原発労働環境の異常さ」
《「私は原発建設から、崩される風土、反原発運動、核燃料輸送、
原発被曝労働者、原発下請け労働者、東海村JCO 臨界事故、
福島原発崩壊を写真で記録した。その集大成の写真展としたい」
(写真展開催にあたっての樋口氏のコメント)。》
『●原発で働く: 「コスト優先」、「命は二の次」』
『●樋口健二さん《原発建設から、崩される風土…原発被曝労働者、
原発下請け労働者、東海村JCO臨界事故、福島原発崩壊を写真で記録》』
『●小出裕章さん《国と東電が策定したロードマップは「幻想」です…
つまり、デブリの取り出しは100年たっても不可能》、石棺しかない』
『●東京電力核発電人災、膨大な《デブリの総量も
3基で計約880トン》…1個のデブリを僅かに持ち上げた?』
『●膨大な《デブリの総量も3基で計約880トン》のうち、福島第1原発
2号機の《1グラム程度を数回採取する予定》…いまだ、それさえも困難?』
『●東京電力福島第一核発電所《1~3号機に計約880トンあると推計されている》
放射線量が極めて高いデブリ…「8億8千万グラムのデブリも1グラムから」』
『●《着手》ねぇ? 「8億8千万グラムのデブリも1グラムから」…《放射線量
が極めて高》い、その数グラムのデブリをどこで保存するつもりなの?』
『●「8億8千万グラムのデブリも1グラムから」…《現場に東京電力社員がいない
下請け任せの姿勢と、点検でミスを見抜けない管理のずさんさを露呈…》』
『●狂気の核発電推進…「原状回復」することも無く教訓も警告も無視し「原発
回帰・原発復権」、しかも「コストやリスクをこっそり国民に押しつける…」』
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【https://www.tokyo-np.co.jp/article/365464】
「耳かき1杯のデブリ」が持つ意義とは 福島第1原発の炉内状況は見えてくるのか 「限界がある」との指摘も
2024年11月8日 06時00分
「極めて小さいが、デブリから得られる分析結果で、取り出し装置の開発などの知見が得られる」。福島第1原発2号機から初めてデブリを回収した意義について、東京電力の担当者は7日の記者会見でこう説明した。成分を分析し、炉内状況の推定や取り出し工法を決めるために活用するというが、今回取り出したのは「耳かき1杯程度」の微量で、限界があるとの指摘もある。
◆三段階の分析プロセス
今回のデブリは格納容器底部に転がっていたが、固まって設備に張り付いている場合もあり、砕いたり、穴を開けたりしないと取り出せないことも想定される。取り出し装置の開発には、デブリの硬さや成分の把握が欠かせない。
デブリの分析は日本原子力研究開発機構の研究所で実施され、主に三つのプロセスに分けられる。
最初に実施する「非破壊分析」は、電子顕微鏡などを組み合わせた装置で、表面上の元素分布を調べる。その後、デブリを切断したり細かく砕いたりし、電子顕微鏡でより詳しく調べる「固体分析」に入る。
「固体分析」では、核燃料由来のウランと、一緒に溶け落ちた金属やコンクリートの結晶構造などを特定。より現実に近い炉内状況が分かるという。
最後の「化学分析」では、切断したデブリを硝酸に溶かして調べる。デブリの成分を特定し、廃炉に向けた作業の安全対策やデブリの保管方法の検討に生かすという。ただ、1~3号機には、核燃料由来が濃いデブリもあれば、他の炉内構造物が多く交じっているものもあり、今回取り出した微量のデブリから全体像を把握するのは困難だ。
◆「本当に一歩」結果公表には1年程度
原子力規制委員会の山中伸介委員長は10月31日の記者会見で、「全体工程の中では本当に一歩。次のステップとして広範囲に採取し分析できて、初めて取り出し工法等の大きな参考になる」とくぎを刺した。
原子力機構は来年3月までに一定の成果をまとめたいとするが、最終的な結果の公表には1年程度かかるという。(山下葉月)
【関連記事】デブリの本格取り出し、実現性は? 福島第1原発廃炉作業の最難関 3つの取り出し案も決定打には…
【関連記事】デブリを出さないと汚染水が止まらないのに…3回目の延期は「想定の範囲」なのか
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【https://www.chosyu-journal.jp/review/32609】
『原発労働者』 著・寺尾紗穂
書評・テレビ評 2024年11月7日
福島第1原発2号機の溶融核燃料(デブリ)の試験的な採取作業の失敗は原子力発電所がその稼働、非稼働を問わず、また事故処理から廃炉にいたるまで高線量の被曝リスクにさらされた労働者の手作業によって支えられていることを、万人に知らしめることになった。
東京電力は、福島原発の溶融デブリ(推計880㌧)をとり出す机上の計画で初歩から足踏みしてきたが、8月22日から試験的に3㍉㌘(耳かき1杯程度)の採取に着手する予定だった。しかしその直前に、装置に接続するパイプ5本の配置順が誤っていたことが発覚したことで中断した。その後9月10日に作業を再開し、装置先端の爪でデブリをつかむ遠隔操作に移ったが、先端のカメラが機能せず映像が操作室に送れなくなった。
そのためデブリの微量採取は断念し、カメラ付の装置を格納容器から引き抜く作業に移り、25日になってようやく装置を納入箱に回収することができたと安堵している。こうしたことは多くの専門家が指摘するように、「きわめて高度の放射線を放つデブリを格納容器から取り出す廃炉作業は現在の科学水準では不可能であり、チェルノブイリ(福島原発はその数倍の放射線量)のように石棺化(コンクリートなどで固める方法)する以外にない」ことを物語っている。
ロボットの取りつけは人間
東京電力はデブリとり出し作業について、短時間でも人が近づくことができないためすべての作業は遠隔操作でおこなうといっている。しかし、今回のパイプ配置順の人為的ミスと映像送信の失敗は、どんな遠隔作業でも大量の放射線量を浴びる「被曝労働者」が決定的な役割を果たしていること、またその現場では孫請、ひ孫請と続く多重下請け構造の最下層の労働者が携わっていることをあぶり出すことになった。
東京電力は今回起きたパイプ接続ミスについて、現場が高線量下であるにもかかわらず東電自身が「現場確認や事前訓練をせず、協力企業任せにしていた」ことに原因があると釈明している。そのため、「現場作業員が高い放射線量下で早く退出することに気を取られ、確認が不十分でミスに気付かず三菱重工に“5本搬入した”と誤った報告をした」というのだ。
ミスのあったパイプの接続作業には7月27日から29日までの3日間、各60人ほどで当たったとされる。指示を出していたのは元請の三菱重工業の担当者で、パイプの運搬や接続は下請の作業員が担当した。当初、三菱重工の下請け企業の労働者が原子炉建屋内で装置の手前までパイプを運搬したとき、パイプを1本仮置き場に忘れた。その翌日、パイプをつなぐときに足りないことに気づき、最終日の29日にそれを運んでつないだが、パイプの順番を間違えたという。
東京電力の説明では、「高線量下での作業は全面マスクで防護服が重装備のため、作業員はパイプに記された接続順を示す数字を見落とした」こと、さらに元請の三菱重工業の担当者が「28日に準備が終わった」と東電に虚偽の報告をしていたことも明らかにしている。
福島原発の廃炉作業には1日約5000人が携わっているという。うち東電社員は約1000人で、現場作業はおもに元請や下請の約4000人がおこなっている。この廃炉作業でも昨年10月、汚染水の多核種除去設備で作業員が洗浄廃液を浴び、想定外の被ばくをする重大なトラブルがあいつぐなど、構造的な作業管理のずさんさが露呈している。今年4月には構内の一部で停電が起きた。このときも地面を掘削する際に電源ケーブルを損傷させる危険性を東京電力が元請に注意喚起しなかったことが要因だとされる。
そうしたことから、今回のデブリ試験採取の作業ミスで、「被曝労働を下請けに押し付けて成り立っている原発という非人道的発電システムの致命的な欠陥があぶり出された」(エネルギー工学専門家・近藤邦明氏)という指摘もある。
『原発労働者』にみる実態
高線量の被曝リスクを負って働く原発労働者にインタビューした寺尾紗穂著『原発労働者』(2015年6月、講談社現代新書)は、「原発には必ず被爆を強いられる作業員が必要」だというあたりまえの事実と、「その大部分は電力会社社員ではなく、多重下請け構造で雇われる労働者」が担っている現実を表沙汰にすることをはばかる社会構造を告発している。
電力会社は「線量の高い部分での補修はロボットでやってます」というが、「ロボットをとりつけるのは人」なのだ。自己処理の現場では防護マスクなど重々しい装備を身にまとっての肉体労働で、マスクを外さずには耐えられない肉体的苦痛から外してしまう。労働者が身につけるアラームメーター(作業開始時に上限の線量をセットしておき、そこに達するとアラームが鳴る装置)も「鳴れば仕事にならないから続けてしまう」こともこの業界では茶飯事で、現場管理者もそれを見て見ぬふりをしている。
「工事は、何月から何月まで完成させねばならないときまっている。試運転に入るまで、何があっても完成させないかんのです。元請けは、危険やからとゆっくりやっているわけにはいかんのですよ」
高放射線量のなかで働いた労働者の話から、その現場はそもそも「労働者の身の安全が最優先され、教育や監督がきちんとゆきわたる場所」ではありえないことがひしひしと伝わってくる。「被曝の可能性なんか考慮もされず、完全にその場しのぎの作業に労働者が従事する」ことだけが求められるのだ。そこに、被曝線量のごまかしやデータの改ざんが当然のようにまかり通る根拠があるという。
多重下請け構造のもとで、現場労働者の賃金は元請が1日当り3万~4万円で受けた仕事が一次下請では2万~3万円になるというふうに、下請になればなるほど差額がピンハネ(中抜き)されて減っていく。末端の下請労働者には日給5000円程度しか入らない構造だ。
そうしたことが、原発で働く労働者を遠ざけ「人手不足」を慢性化させている。また、現場で教育に携わる熟練労働者が少なくなり、若手への技術継承がむつかしくなっている。パソコンやAIを駆使しても、現場では「計算だけではできない作業」が勝負になるのだが、そのもとで現場労働者への安全教育が損なわれていることも深刻な問題になっている。
『原発労働者』では、1回で200㍉~300㍉シーベルト被曝するという使用済み核燃料プールに1回200万円、300万円で潜る外国人労働者の例も紹介している。正式な雇用関係にある日本人労働者にそのような作業をやらせたら線量基準を大幅に超える違法行為になるから、国籍が違うという一点で法の網の目をかいくぐっての使い捨てである。
こうしたことが明るみになり、2018年に法務局が福島の廃炉作業に外国人技能実習生を働かせないことを決めた。しかしその後も、外国人労働者の実態が発覚している。このように違法すれすれの行為を強いて「すぐ自国に戻れる外国人労働者の大量被曝なしに、原発はたちゆかない」ことも公然の秘密となっている。
著者の寺尾氏は、そのような「具体的な現場のイメージを持たないまま、そこで働く人の言葉に触れないまま、原発というものを何となく肯定」し、再稼働や輸出などの議論が展開される現実に違和感を感じたことが、同書執筆の動機になったことを明らかにしている。
(講談社現代新書、208㌻、760円+税)
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