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将棋駒作家のつぶやき

対局日誌 ~ビッグ4攻略~

2021年01月06日 | 対局日誌
棋戦:将棋倶楽部24
先手:某氏
後手:日向

【第1図までの指し手】
▲7六歩 △3四歩 ▲2六歩 △4四歩 ▲4八銀 △4二銀
▲5六歩 △4三銀 ▲5七銀 △5二飛
2021年最初の一局。オールドファンにはお馴染みながら、現代ではほぼ指されなくなったノーマル中飛車。
復活を願って独自研究を続けている。

【第2図までの指し手】
▲6八玉 △5四歩  ▲6六銀 △3二金 ▲7八玉 △9四歩
▲9六歩 △7二銀  ▲7七角 △6四歩 ▲2五歩 △3三角
▲6八角 △6三銀

先手の構えはオーソドックスな対抗系居飛車のスタートから引き角で2筋の交換を目指す形。一歩手持ちにしっつ、飛車の利きが敵陣に直通して悪い訳がない。

【第3図までの指し手】
▲2四歩 △同 歩 ▲同 角 △同 角 ▲同 飛 △2三歩
▲2八飛 △7四歩 ▲8六歩 △7二金 ▲8八玉 △7三桂
▲7八銀 △6五歩 ▲7七銀引 △4二玉

松田九段、大内九段が多用したツノ銀中飛車エトワールの陣、玉の定位置は△7二だが、現代流は△4二・5二・6二のいずれか。
優れた金銀の連結に囲まれた中住まいは、現代将棋最強の布陣か?

【第4図までの指し手】
▲1六歩 △5一飛 ▲1五歩 △8四歩 ▲5九金右 △8一飛 ▲8七銀 △5七角

先手は固める方針でまずは銀冠を志向するが、駒が偏るので隙が生まれる。その瞬間を逃さず△5七角と打ち込む。

【第5図までの指し手】
▲6八金右 △2四角成 ▲7八金上 △5二玉 ▲9八香 △4二馬
▲9九玉 △3三桂 ▲8八金 △2一飛 ▲7八金右

後手△2四角成で△3九角成は以下、▲2六飛、△4八馬▲5八金寄△3八馬▲5九金寄と指されてどうか。
途中△8五歩~△9三角成を狙う手順もあるが、△8五歩の瞬間に▲5七角と合わせられると、苦労する割に効果が出ない。
従って、小さな葛篭(つづら)を選んで△2四角成とするのが上策と判断。第5図の後手は金銀4枚+馬、これ以上の厚さは望めない不敗の陣形が完成した。
ただし、先手も居飛車穴熊の理想形「ビッグ4」、果たしてどちらの陣形が優っているのか。

【第6図までの指し手】
△2四歩 ▲2六歩 △8一飛 ▲5七角 △2三金 ▲6六歩 △6二金
▲6八角 △2一飛 ▲6五歩 △同 桂 ▲6六銀 △6四歩

不敗ではあるが、必勝ではないところが将棋の難しいところ。ここからは自身の構想力が試される局面。

【第7図までの指し手】
▲1八香 △5三馬 ▲5五歩 △同 歩 ▲同 銀 △5四歩
▲6六銀 △4五歩 ▲1七香 △4二玉 ▲7五歩 △4四馬 ▲6七歩

馬を軸にして戦線を押し上げるのが私の方針、ラグビーの「モール」に似ている。ポイントは駒と駒の横の連携を強固に保つこと。

【第8図までの指し手】
△3五歩 ▲7四歩 △同 銀 ▲7五歩 △6三銀
▲4六歩 △同 歩 ▲同 角 △4五歩 ▲6八角 △3四金

働きの悪い金将を前線に繰り出し活用を図る。先手が反撃をしてくるとすれば現状は3筋からであり、それを事前に封じる。飛車の可動域が広がり、利きが通ったのも大きい。
【第9図までの指し手】
▲7九角 △3二玉 ▲6八角 △5五歩 ▲5八飛 △5一飛
▲2八飛 △5六歩 ▲5八歩 △5四銀左 ▲7九角 △4六歩

本当は△6二の金を玉の近くに寄せたいが、もう十分形なので進軍開始。4筋と5筋の歩が一歩一歩前進、それを金銀馬飛桂が支えている。
この様な展開を故米長永世棋聖が名著「米長の将棋」の中で、「雪崩(なだれ)攻め」と命名されていたが、プロ間ではほぼ実現しないので、その名称はメジャーにはならなかった。
さて、△4六歩はタダだが、▲同角なら△5七歩成▲同歩△4五歩で角を逮捕する手がある。

【第10図までの指し手】
▲同 角 △5七歩成 ▲6五銀 △同 銀 ▲5七角 △8五歩
▲同 歩 △7六銀打 ▲6八角 △8七銀成 ▲同金右 △7六銀打

先手は▲6五銀で角の逮捕は逃れたが、後手の銀が5段目に進出し、飛車の利きが敵陣にまで直通した。しかも、と金の処置で後手を引かされている。
後手は△8五歩で本丸攻略へ、▲6六銀が居る間は分かりにくかったが、穴熊攻略の主役は△4四の馬である。
この地点に角(馬)を安定的に配置出来れば、ビッグ4も怖くない。

【第11図までの指し手】
▲7八銀 △9五歩 ▲同 歩 △8七銀成 ▲同 銀 △7六金
▲7八銀打 △8六歩 ▲同 銀 △9五香 ▲同 香 △8七歩

△6五の銀が更に進出するので、先手は△7六の銀を取るとことが出来ない。それを見越して▲7八銀と受けさせてから悠々と△9五歩、歩の補充を図る手筋。
第11図を冷静に見て頂きたい、先手は飛車落ちである。

【投了図までの指し手】
▲7七銀引 △8八歩成 ▲同 銀 △8七金打 ▲7七香 △7八金
まで138手で後手の勝ち

どうやっても負けるはずがない、って思うと将棋は危ない。色々な勝ち方はあるものの、一番着実に銀将をタダ取りして、相手に投了を促す。

第9図を再掲しよう。

駒の利き色分けしてみた。駒の利きが無いか、或は双方の利き数が同じか所は白色とした。
水色は先手の勢力、マスの数は28、黄色は後手の勢力、マスは40あり間もなく先手陣に届こうとしている。
駒の損得は全くないものの、後手が盤面を制圧しているのがお分かり頂けるだろう。
将棋は最終的に相手の玉を詰ますゲームだが、ビッグ4の様に堅い王様と競り合ったら勝てない。
この将棋は先手のミスもあり出来過ぎだが、構想の立て方や考え方などは、級位者の方には参考になったのではないだろうか。
             (了)

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