細田暁の日々の思い

土木工学の研究者・大学教員のブログです。

哲学、ヴィジョン

2016-10-19 07:59:14 | 人生論

繁忙期に入って半月が過ぎ、自身の全力で取り組まないと生きていけないので、結果的には活き活きします。特に今週は、火曜、木曜に講義、ゼミ等が密集した通常スケジュールの中、鞆の浦から東北へと3泊4日の出張を土曜日にかけて行いますので、刺激的です。

昨日の火曜日は、例の「土木史と技術者倫理」の第2回目でした。初回の大混乱の状況は何とか収束し、250名くらいでしょうか、受講生も確定しました。他の教養の科目では「抽選」が当たり前のようでして、受講したい学生が受講できず、抽選に当たった意欲の無い学生がグーグー寝たり、講義も受けずに遊んでいるような状況だとか。皆さん、この大学の状況、どう思われますか?大学だけのせいではないですよ。国民全体で無駄の削減、という聞こえのいいスローガンで切りまくってきた結果でもあるのです。

土木史の授業は私にとって6年目になりました。昨日は、「トンネル掘削技術の発達」という回で、古代のトンネルや箱根(深良)用水などから、丹那トンネル、青函トンネル、Alp Transit、横浜環状北線や外環自動車道のシールドトンネルなどにももちろん触れました。「ストック効果」を最重要キーワードに設定して、講義をつむぎました。少し、学生のレポートを読みましたが、例年よりも早く、土木史の面白さ、に気付いてくれているようです。「正直、土木史からこんなに学べるとは思っていなかった」という感想もありました。

昨年、300名の受講生を経験しているので、今年は少し余裕を感じます。また、当然ですが、受講生たちに土木への興味を持ってもらうスキルや情報は、年々増えていきます。数年前だと、トンネルについてそれほど語るものを持っていなかったであろう私も、今年はいくらでも引き出しがある状態でした。これも、一つのストック効果でしょうか。

ちなみに来週は、「橋梁の発達」です。楽しみです。

今日は4時に起きていろいろと準備をし、鞆の浦に向かっています。鞆の浦に関わり始めたのが2012年4月ですから、4年半が経過しました。2013年1月に、初めて鞆小学校で赤間君と防災授業を行いました。それ以降、毎年、鞆小学校や鞆中学校で防災授業を行わせていただいています。今日は、13時25分からの家庭科の授業で家具固定を中核に据えた防災授業を、今年の卒業研究で取り組んでいる石橋さんと一緒に行います。

鞆は、ご存知の通り、まちづくりの問題で長らくもめてきた地域で、道路港湾整備の事業は立ち消えになってしまいました。この状況を改善すべく、これまでの経緯も踏まえた上で、福山市が新たに、鞆まちづくりビジョンを来年度に策定予定で、そのためのワークショップを今年度から始めています。合意形成のためのファシリテータを桑子敏雄先生が務めておられ、私たちのチームも何とかこの状況に貢献できればと願っています。

今日の防災授業では、ビジョン(ヴィジョン)の話もします。

本来、ビジョンよりも先に、哲学(フィロソフィー)があるべきと思います。

フィロソフィー(人はどう生きるべきか)とビジョンの話をして、ビジョンがいかに大切かを、具体的に話すつもりです。

また、竹村公太郎先生の文明モデルも活用しながら、地形、自然の特徴を適切に踏まえた社会の土台がいかに大切か、を説明します。その土台(下部構造、インフラ)が、そこに住む人間に与える影響は極めて大きいことを、分かりやすく説明します。

では、鞆ではどのようなビジョンを持つべきでしょうか。中学2年生たちと一緒に考えてみたいと思います。もちろん、私の考えはありますが、生徒たちと話し合ってブラッシュアップし、それを鞆まちづくりワークショップでの発表(11月下旬)につなげていければと思っています。

講義やら、研究指導やら、予算申請やら、本や論文の執筆やら、研究出張やら、隙間のほとんどないスケジュールではあるのですが、それらがすべて有機的に結びついている感覚は心地よいものです。多くの方々と結びついて、連携しながら、コミュニケーションしながら仕事をしていると、いろんなヒントもいただけるし、エネルギーもいただけます。

今日も一日、姫路のホテルの温泉につかるのを楽しみに、ベストを尽くします(口癖)。