GPV予報は微妙でしたが、写真撮影よりもPHD2による赤道儀の動作解析をしたくてこの夜は臨みました。
最初のキャリブレーション。
やはりステップ数が赤経と赤緯で大きく異なる。
初期設定では赤経・赤緯ともに12ステップなるようにPHD2が信号を送るようですが、ほぼ一貫して赤経のステップ数が赤緯のステップ数の2倍になります。
赤経・赤緯軸の駆動系をベルトドライブ化してくれた友人曰く、赤経のウォームホイールの歯数が720は、赤緯のウォームホイールの歯数が360歯で、その情報をプログラムに入れてないから、1ステップで動く量は赤緯が赤経の2倍になるとのこと。
なるほど。
じゃ、今後、キャリブレーションでは、赤経12ステップ、赤緯6ステップになればそれでよいということで。
夕飯を食っている間にガイドアシスタントでシンチレーションの解析を行わせます。
他の値は前回と大きく変わらないはずです。
一応、バックラッシュも測定しますが、結果は前回と大きく変わらず。
オートガイドの精度、悪くないです。
東の空に向けると、赤経のガイド精度が、赤緯より若干悪い傾向はいつものことです。
RMS errorが赤経・赤緯とも0.5”未満であればいうことありませんが、1"未満で星が伸びなければ、僕的にはOKです。
ISO 800, 180秒露出でこんな感じの写り。
若干、星がおむすび山の形をしていますが、ギリギリ合格。
もう少し待てばオートガイドがもっと安定してきて星が真ん丸に写るでしょう。
さてさて、最低限のオートガイドができたところで、今夜の本命、赤道儀の極軸合わせに入ります。
PHD2のドリフトアライメントツールを使いました。
すでにポールマスターでそれなりに極軸を合わせてあります。
天の北極に近づくほど星の動きは小さくなります。
天の赤道付近の星の動きが一番大きくなるので、PHD2のドリフトアライメントツールの方が、ポールマスターよりも精度高く極軸を合わせられるのではないかと思ってのことです。
初回のazimuth(方位角。東西方向)の評価。
赤道儀の東西の向きを変えて、ピンクの円の上にガイド星が来るように調整します。
ただし、ピンクの円の左右どちら側にガイド星をもってゆけばいいのかについては、PHD2は教えてくれません。
説明書には、円の左右のどちら側にでもいいので、ガイド星を円の上に移動させて、再度、ドリフトアライメントツールを起動させ、円が小さくなっていれば「アタリ」、円が2倍に大きくなっていたら「ハズレ」であると書いてありました。
ハズレを引いた場合は、逆の方向へ修正しろ、と。
これが赤道儀の東西の向き(方位角)を調整するネジです。
ちなみに方位角の回転軸は赤道儀の前側にあります。
その回転軸から方位角調整ネジまで、77㎝もあります。
まずはネジの最初の位置を確認します。
定規の値は「21.5mm」というところでしょうか。
右側の調整ネジをねじ込んで、赤道儀の向きをわずかに東へ動かし、ガイド星をピンク色の円の上に移動させました。
ガイド星を移動させたことで、間隔が「22.2mm」程度になりました。
再度、ドリフトアライメントツールを起動します。
赤い赤緯の線が、青い赤経の線の上にきてしまいました。
22.2-21.5=0.7mm、東に向けたのでは、修正量が大きすぎたということです。
軸までの距離が77cm、つまり770mmであることを考えると、すでに相当な精度で追い込んであったことになります。
間隔を22.0mmになるように、つまり、西へ0.2mmズラしました。
その結果は、、、
あともう一息です。
なんとデリケートな作業。
再度、ネジを0.1mm程度調整した結果、方位角が修正されました。
方位角が修正されたので、今度は高度の修正にかかります。
ドリフトアライメントツールの高度の結果はコレ。
完全には合ってません。
考えた末、これで「よし」としました。
方位角の調整の経験から、高度の調整もおそらく0.1mm単位となることが推測されます。
総重量1t近い巨大赤道儀+巨大ニュートンを0.1mm単位で持ち上げたり、下げたりする自信がありませんでした。
方位角を調整した後、6本の固定ネジを締めました。
念のため、再度方位角を評価してみたところ、、、ズレてました。
しかし、これで「よし」としました。
再度調整をかけても、0.1mm程度の誤差は出てくるでしょう。
もはやこれ以上、極軸を追い込むのは諦めました。
さて、可能な限り極軸を合わせたところで、いよいよ撮影です。
極軸がより正確に合わせられたことで、少なくとも赤緯方向については修正量が少なくなるはずです。
その成果たるや、、、と楽しみにしてました。
手始めに、やはりこの季節ですから、オリオン大星雲でしょう。
明るくていつも飽和してしまう中心部をいじったので、不自然な写りに感じるかな?
コマコレクターを使用していないので、端っこの星が若干伸びるのはご愛嬌。
写真中心部の星は丸い。
でも、よく見ると周囲の星の伸び方が均一な感じではない。。。
この時は全く気にしませんでした。
しかし、これがこの晩の残りの運命を示唆していたのかもしれません。
気分を良くして、隣のランニングマンに望遠鏡を向けました。
この巨大ニュートン、被写体を変える場合は、次の被写体に望遠鏡を大まかに手動で向け直して、ステラショット2の「導入補正」機能を使って、被写体を画面の中心に持ってきています。
で、今回もランニングマンに向けるべく、筒のお尻をつかんで少し高度を上げました。
この時、少し主鏡のセルが動いたのを感じたんです。
「あれ?」と思い、主鏡の押しネジを触ると緩んでいる。。。
緩んだ押しネジ2本を軽くねじ込みました。
この時に気づけばよかったんです。
主鏡が動いたということは、光軸がずれたということなんですね。。。
構図を決めるために撮った、ランニングマンです。
よくみると、10秒露出であるにも関わらず、すでに星が楕円に伸びています。
上の写真の中心部を切り取って拡大したのがこの写真。
大きな明るい星は丸く見えますが、小さな星をよくみると、楕円形です。
10秒露出なので、オートガイドをしてなくても星が伸びることはありません。
10秒露出で星が楕円に写っていると言うことは原因がなんであれ、、、どんなにオートガイドの精度を上げても、全ての写真は失敗作になることを意味します。
この写真、構図ぎめだけの目的で撮ったため、星が伸びていることを見落としたんですね。。。
この後、当然の帰結として、なかなか星が丸く写らないわけですが、オートガイドの方も思ったほど精度が上がらなかったもので、オートガイドが原因だと勘違いして時間を無駄にしていました。
しかし、今考えると、RMS errorが赤経も赤緯も1”を切っていたわけですから、極端に悪かったわけではないんです。
(もちろん、もっと良くあってほしいですが。。。できればRMS errorが0.5”を切るところを目指しているわけなんですが。。。)
時間と共にシンチレーションが刻々と変化しているので、再度ガイドアシスタントなんて起動してみたりしました。
とりあえず極軸が確実に追い込まれたことが確認できました。
ガイドアシスタントに従い、最小移動検知量を設定しましたが、(当然の結果として)星が丸く写りません。
僕は、苦し紛れに赤経のオートガイドのアルゴリズムを変えてみました。
いつも頻用している「ヒステレシス」から「PPEC」に変えてみました。
前回の2022/10/02の時は、PPEC、そんなに良い印象がなかったんです。
むしろヒステレシスの方がよさそうだった。
今回は、、、ガイド精度が上がりました。
しかし、それでも(当たり前ですが)星がまん丸に写らない。
もたもたしているうちにランニングマンが子午線に来てしまい、撮影を諦めることになりました。
お次に筒を向けたのはオリオン座を追いかけてきたバラ星雲。
これがなぜか、星が丸く写ったんですね。。。
今思えば、ニュートンの主鏡セルをつかんで方向を変えた時に、たまたま光軸が少し改善したんでしょうね。
奇しくもこの時、オートガイドがこの夜最高の精度を叩き出しました。
とーこーろーが、この後、どんどん星が伸びていきます。
過去最高のオートガイドをしているにも関わらず、星が丸く写りません。
ここに至り、僕もおかしい、と気づきました。
ライブビューにするとこんな感じでした。
ピントがずれた可能性も考え、ピントを合わせますが、改善しませんでした。
光軸がズレたな、とやっと気づきました。
光軸がズレたことを証明したいと思いました。
時刻はAM4:00。
今更、本格的に光軸をチェックする気になれません。
簡単な方法。
どうせ動くとしたら主鏡。
斜鏡はガチガチに固めてある。
そうだ。
望遠鏡を大きく動かしてみれば写りがまた変化するのではあるまいか。
M81に望遠鏡を向けてみました。
写りが大きく変化しました。。。
これで光軸がズレていること、おそらくは主鏡の固定が甘いことがわかりました。
3時間寝て、起床し、急いで朝飯を食べて、光軸調整をしようと思いましたが、主鏡が結露していて、何もできませんでした。
次回は光軸調整からスタートです。
人間(いや、僕だけの問題か??)、なかなか学習しないもので、何度も同じ過ちを繰り返しますね。
色々、アホなことをやってますが、今回の成果は大きい。
成果その1・・・・赤道儀の極軸を精度よく追い込んだこと
成果その2・・・・過去最高の精度でオートガイドすることに成功した
いい写真こそ撮れませんでしたが、確実に前進しています。
★が丸く写る迄、大変なご苦労をされており、驚きます。(^0^8
いろいろな原因があるとは思いますが、到達点はどの辺なんでしょうネ。
機械的な要素の修正もそうですが、基本的にどの程度迄
追い込めば良いのか?を数値で検証しておく必要があるように
思います。(^0^;
小型の赤道儀とかとは全く異なるのでしょうが、案外に
限界を知らずにテイクアンドトライでやってる人を見ると
自然条件迄含めてどうなのか?といつも思います。(^0^v
難渋してます。
しかし、極軸がほとんど合ったことで、ゴールは近いように思います。
というか、今回主鏡が動かなければ、完成を見ていたところです。
もう少しです。
どこまで星が丸く映ってほしいかと問われると、「自分が許せるところ」と言った感じでしょうか。
数値で言うなら1:1.1程度でしょうか。
この望遠鏡に関わって3年半が経過しようとしています。
けど、ここに着た回数はまだ25回程度。
つまり、2ヶ月に1回ちょっと来てる程度です。
その間、建物の修理やら、駆動系の回収作業を繰り返しているので、性能が安定しないのも仕方がないんです。
赤道儀と望遠鏡が今の状態になって、まだ5回くらいしかここに来てないです。
そろそろいい感じになると言うことで、そこそこ順調なのではないでしょうか。
じれったいかもですが、あと少しで本格稼働できると思います。