駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

眩暈の不思議

2012年06月20日 | 人生

   

 街中で内科医をしていると、眩暈の訴えが非常に多いのに気が付く。研修医の頃は眩暈の訴えでは小脳梗塞など重症深刻な疾患を見逃すまいと身構えたものだ。今の研修医は画像診断に首まで浸かっているので、目眩を診察で問診と診察だけで診断する緊張感を知らないようだ。眩暈をざる蕎麦や炒飯のように感じているかもしれない。

 確かに実際には眩暈の訴えの中で出血や梗塞の頭蓋内病変は希で、当院では年に一人くらいのものだろう。そうかと言ってメニエールや前庭神経炎もさほど多いものではなく、真性めまいでは頭位変換性のものが比較的多い。

 そして一方になんだかふらつくと訴える目眩感の患者さんが大勢居る。その中に貧血や低血圧もなく、画像診断でも異常ありませんと返されて来る一群の、ロカンタン氏さながらの、つまり生きてある不安から生じたふらつき感とでも言いたくなる症状を訴える患者さん達が居る。どうもあまり医学的でないと思われるかもしれないが、前線の診療所では珍しくない。どういうものか圧倒的に女性に多い。

 思うに、女性には強くても依存的な人が多く、面倒を見る子供が自立し尻に敷いていた亭主も暖簾に腕押しになってしまうと、生きてゆくつっかい棒がなくなり、生きてある不安をそこはかとなく感じ、ふらつき感を覚えるらしい。どこまで当たっているかわからないが、私の秘かな観察からの仮説憶測である。

コメント (2)
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