医学の進歩は日進月歩で、遅れないようにするのが大変である。何しろ広く浅く診療するのが仕事(総合内科診療)なので、頭を切り替えながら、毎日少しずつではあるが勉強している。臓器別疾患別に専門性は高まり、それはそれで大変なのだが、専門の範囲内だとある程度類推や外挿が効くので頭を切り替えるほどの準備は要らない。しかし、専門域が異なる例えば脳変性疾患と消化管疾患では、主要疾患の概念が異なり検査手技手法も異なるので、譬え基本的な事項でも両者をきちんと理解し自分の診療範囲に持ち込むのは大変だ。
もっともこの総合診療の難しさや意義は、患者さんや専門医に理解してもらえないことがあり、残念な思いをさせられることもある。
高血圧症は非常に多い病気で優れた治療薬が多数出ているので、診療しやすい?疾患になってはいるが、実は長期的によい結果を得るには細かい知識技能が必要で、高血圧学会から診療ガイドラインが出ている。このガイドラインはおおよそ五年ごとの改定なので、その間の変化は学会誌や講演会で仕入れなければならない。
血圧はガイドラインで合併症のない高齢者は診察室血圧140/90以下を目標にしていたのだが、高血圧学会の元締めから、それば見直されることになると聞いた。後期高齢者で血圧を140以下に下げるのはよくないという臨床研究の結果が出てきたのだ。この辺りは、そんなことは分かっていたという先生や、否やはり後期高齢者でも低い方が良いのではないという先生が居られるが、今は証拠に基づいた診療の時代なので、新しい臨床研究結果を遵守してゆくのが臨床医の心得と思う。