二十年くらい前までは子供を六人も七人も生んだお婆さんが沢山居た。
往診に行くと140cmくらいしかない背中の丸くなったお婆さんが布団の上にちょこんと座り、「ありがとうございます」と丁寧に挨拶されたものだ。
いよいよとなると部屋に収まりきれないほどの、子供と言っても中高年の男女が詰めかけて、よくこの小さいお婆さんからこんなにたくさんの人達が生まれたものだと、驚き感心したものだ。
それこそ戦前は少子化なんて、どこ吹く風だったのだろう。今は流石に半ダース以上産んだお婆さんは希になった。絶滅危惧種と言ってもいいかもしれない。これを保護することは至難の業となった。