芦屋教室 「ブログde秀歌鑑賞」 № 2012年3月 (松村正直選)
★歌人の松村正直先生にご協力いただき、
万葉集や和歌の時代から~平成の短歌までありとあらゆる歌の中から、
毎月3首、ご紹介する月イチの企画です。
今月は『 桜 』です
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世の中に絶えて桜のなかりせば春の心はのどけからまし
在原業平(ありわらのなりひら)『古今和歌集』巻1(春上)
「もし、世の中に全く桜というものがなかったならば、
穏やかな心で春を過ごせるだろうに」という意味の歌です。
もちろん、実際には桜があるために、落ち着かない心で過ごしているわけです。
「せば・・・まし」は、事実に反することを想定して、
その仮定に立って推量する時(反実仮想)に使う語句。
桜のない世界を想定することによって、美しく桜の咲き盛る春の季節を詠んでいます。
在原業平(825~880)は平安初期の歌人で六歌仙の一人。
美男子として、和歌の名手として有名な人物です。
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桜ばないのち一ぱいに咲くからに生命(いのち)をかけてわが眺めたり
岡本かの子『浴身』
桜の様々な姿を詠んだ「桜」という一連138首の冒頭に置かれた歌です。
「いのち一ぱいに」咲く桜を「生命をかけて」眺める作者。
二回繰り返される「いのち」という言葉に、
桜の持つ艶やかな生命力と、それに負けない作者の情熱的な気持ちが表現されています。
全身で対峙する二つの命の輝きが感じられますね。
後に短歌から離れて小説に転身し、
小説家として名を挙げた岡本かの子(1889~1939)の代表作です。
かの子は、画家・岡本太郎の母親としても知られています。
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ちる花はかずかぎりなしことごとく光をひきて谷にゆくかも
上田三四二(うえだ・みよじ)『湧井』
山に咲いている満開の桜でしょう。
風がふくたびに、花びらが散っていきます。
花びらの一枚一枚が春の光を受けて、残像のように光の筋を引きながら、
谷底へと流れていくのです。
映像的な鮮やかさと、どこか幻想的な雰囲気とをあわせ持った歌で、
桜の美しさが非常に印象的に詠まれています。
二句の「かずかぎりなし」でいったん切って、
その後「ことごとく」とつないでいく呼吸もうまいと思います。
評論家、小説家、医師としても活躍した上田三四二(1923~1989)の一首です。
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松村正直先生の「短歌」講座はこちら!
【芦屋教室】
「短歌実作」講座(第3金曜、A午前/B午後)
奇数月のご担当は池本一郎先生
偶数月のご担当は松村正直先生
随時、お入りいただけます。
(Aクラスのみ)1回体験もできます。
「はじめてよむ短歌」講座 (第1金曜、午前)
随時、お入りいただけます。
1回体験もできます。
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毎月3首、ご紹介する月イチの企画です。
今月は『 桜 』です
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世の中に絶えて桜のなかりせば春の心はのどけからまし
在原業平(ありわらのなりひら)『古今和歌集』巻1(春上)
「もし、世の中に全く桜というものがなかったならば、
穏やかな心で春を過ごせるだろうに」という意味の歌です。
もちろん、実際には桜があるために、落ち着かない心で過ごしているわけです。
「せば・・・まし」は、事実に反することを想定して、
その仮定に立って推量する時(反実仮想)に使う語句。
桜のない世界を想定することによって、美しく桜の咲き盛る春の季節を詠んでいます。
在原業平(825~880)は平安初期の歌人で六歌仙の一人。
美男子として、和歌の名手として有名な人物です。
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桜ばないのち一ぱいに咲くからに生命(いのち)をかけてわが眺めたり
岡本かの子『浴身』
桜の様々な姿を詠んだ「桜」という一連138首の冒頭に置かれた歌です。
「いのち一ぱいに」咲く桜を「生命をかけて」眺める作者。
二回繰り返される「いのち」という言葉に、
桜の持つ艶やかな生命力と、それに負けない作者の情熱的な気持ちが表現されています。
全身で対峙する二つの命の輝きが感じられますね。
後に短歌から離れて小説に転身し、
小説家として名を挙げた岡本かの子(1889~1939)の代表作です。
かの子は、画家・岡本太郎の母親としても知られています。
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ちる花はかずかぎりなしことごとく光をひきて谷にゆくかも
上田三四二(うえだ・みよじ)『湧井』
山に咲いている満開の桜でしょう。
風がふくたびに、花びらが散っていきます。
花びらの一枚一枚が春の光を受けて、残像のように光の筋を引きながら、
谷底へと流れていくのです。
映像的な鮮やかさと、どこか幻想的な雰囲気とをあわせ持った歌で、
桜の美しさが非常に印象的に詠まれています。
二句の「かずかぎりなし」でいったん切って、
その後「ことごとく」とつないでいく呼吸もうまいと思います。
評論家、小説家、医師としても活躍した上田三四二(1923~1989)の一首です。
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奇数月のご担当は池本一郎先生
偶数月のご担当は松村正直先生
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「はじめてよむ短歌」講座 (第1金曜、午前)
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