青い麦
自然は自力で育つ。一粒の種から芽が出てやがて花が咲き、ふたたび多くの種になって稔る。一粒万倍。不思議といえば不思議。水が葡萄酒に変わるのも奇跡なら、あの小さな種から青々とした芽が出るのも奇跡だ。
ここ二三日の雨と暖かさで、ずいぶん成長したらしい。
素人の道楽ごとでしかも一年生の初心者だから、これくらいが関の山か。
横の崖の脇に見知らぬ花が咲いていた。その色彩ゆえに見つけられてしまう。もちろん花は見つけられるためにこそ色美しく装うのだろうけれど。野バラもその愛らしさのために、いたずら好きの少年ゲーテのために折られてしまう。名前は知らない。
ただ自然は美しい。
ジャガイモの畝を作る。
麦畑青くしたたる崖下に隠れるごとく咲き居りし紅のバラ