作雨作晴


日々の記憶..... 哲学研究者、赤尾秀一の日記。

 

ヘーゲル『哲学入門』第二章 国家社会 第二十七節 [政府について]

2021年05月08日 | 哲学一般

 

 §27[政府について]

Die  Regierung  ist die Individualität   (※1)des an und für  sich (※2) seienden Willens. Sie ist die Macht die Gesetze zu geben und zu hand­haben oder zu vollstrecken.

  
政府 は、必然的に(本来的に)存在する意志の個体性である。それは、法律を与え管理し、もしくは執行するところの権力である。

Erläuterung.
説明

 Der Staat hat Gesetze. Diese sind also der Wille  in seinem allgemeinen abstrakten Wesen, das als solches untätig ist; wie Grundsätze, Maximen nur erst das Allgemeine des Wollens, noch nicht ein wirkliches(※3) Wollen ausdrücken oder ent­halten. 

国家は法律をもつ。これら法律はその普遍的で抽象的な本質における意志であって、それ自体としては活動的ではない。それらは原則や格言のように、さしあたってはただ意志の普遍性を表現しあるいは含むのみであって、いまだ現実的な意志にはなってはない。

Zu diesem Allgemeinen ist nur die Regierung der tätige und verwirklichende Wille. Das Gesetz hat wohl als Sitte, als Gewohnheit (※4)Bestehen, aber die Regierung ist die bewusste Macht der bewusstlosen Gewohnheit.

この普遍的なもの(法律)にとっては、ただ政府のみが活きて働きかつ実現するところの意志である。法律はたしかに倫理として、慣習としても存在するけれども、しかし、政府とは 意識されていない慣習を自覚する権力である。

(※1)
die Individualität    個性、 人格、主体性、個人性、個体性 などと訳される。原意は、「不可分性」、二つに分割できない性質のこと。人間の人格と同じく、政府もまた一つの統体であって分割できない。

(※2)
an und für  sich ここでは「必然的な」と訳した。「潜在的かつ顕在的」の意。
「政府」の存在は必然的であるから、かって流行したことのある「無政府主義」なども現実の壁にぶち打ち当って破綻せざるをえない。だから無政府主義を掲げた運動などは、無政府を実現することにはならず、むしろ彼らの意図に反して「最悪の政府」を招き寄せることになるだけである。
(「an und für sich」をどう訳すべきか - 夕暮れのフクロウ https://is.gd/tPnAPg)

(※3)
wirklich  現実において作用していること。真に、現に、現実に、実際に、リアルに

(※4)
Gewohnheit
習慣、風習、 慣例、 恒例、 常習

 

ヘーゲル『哲学入門』第二章 国家社会 第二十七節 [政府について] - 夕暮れのフクロウ https://is.gd/7PVM5K

 

 


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