しかし、僕は他の良いものを見た。巨大なガジュマルの樹に巣食う数々の生活を見た。その背後に湧き上がる巨大な雨雲を見た。人間どもに挑みかかる烈しい象を見た。≪象≫を征服した気高い少年を見た。象と少年を包み込む高い≪森≫を見た。
世界は良かった。
大地と風は、荒々しかった・・・・・・花と蝶は美しかった。
僕は歩んだ。
出会う人々は、悲しいまでに愚劣であった。出会う人々は悲惨であった。出会う人々は滑稽であった。出会う人々は軽快であった。出会う人々は、はなやかであった。出会う人々は、高貴であった。出会う人々は荒々しかった。
世界は良かった。
インドだからって聖人、善人、素朴な人ばかりってわけじゃない。悪人、俗人入り乱れて人間博覧会みたいだね。日本はその幅が平均的だけど、インドの場合聖と俗の幅が驚くほどかけ離れている。
(中略)
どのバリエーションの格でつきあうかで、自分の格が見えるんだね。
(中略)
しかし、高い人格の人間と出会う旅イコール良い旅、ということでもない。どうしようもなくくだらない奴から、次元の高いのまで、むしろどれだけのバリエーションが旅の中に展開されたかだね。それが旅の豊かさだと思う。
私の屍を、良い場所に持っていきたい。
(中略)
河の見える聖地の赤土の上で、天空を見つめ一人印を結びながら静かに死んでいったあの男は、なんてダンディな奴だ!
インドはね、撮りすぎるとダメなんだ。インドってのは撮れちゃうから。周り三六〇度ぐるりと一回転して三十六枚押したら、一本フォトストーリーができてしまう。だからインドへ行った人の写真ってのはみんな同じになる。写りすぎるってことは、全部撮ってもダメということなんだね。インドは「何を撮らないか」というマイナスの作業でしか自分の視点が出てこないのね。
世界は良かった。
大地と風は、荒々しかった・・・・・・花と蝶は美しかった。
僕は歩んだ。
出会う人々は、悲しいまでに愚劣であった。出会う人々は悲惨であった。出会う人々は滑稽であった。出会う人々は軽快であった。出会う人々は、はなやかであった。出会う人々は、高貴であった。出会う人々は荒々しかった。
世界は良かった。
インドだからって聖人、善人、素朴な人ばかりってわけじゃない。悪人、俗人入り乱れて人間博覧会みたいだね。日本はその幅が平均的だけど、インドの場合聖と俗の幅が驚くほどかけ離れている。
(中略)
どのバリエーションの格でつきあうかで、自分の格が見えるんだね。
(中略)
しかし、高い人格の人間と出会う旅イコール良い旅、ということでもない。どうしようもなくくだらない奴から、次元の高いのまで、むしろどれだけのバリエーションが旅の中に展開されたかだね。それが旅の豊かさだと思う。
私の屍を、良い場所に持っていきたい。
(中略)
河の見える聖地の赤土の上で、天空を見つめ一人印を結びながら静かに死んでいったあの男は、なんてダンディな奴だ!
インドはね、撮りすぎるとダメなんだ。インドってのは撮れちゃうから。周り三六〇度ぐるりと一回転して三十六枚押したら、一本フォトストーリーができてしまう。だからインドへ行った人の写真ってのはみんな同じになる。写りすぎるってことは、全部撮ってもダメということなんだね。インドは「何を撮らないか」というマイナスの作業でしか自分の視点が出てこないのね。