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うちのトイレがあまりに殺風景だからといって、夕夏がトイレの壁に写真を貼った。
写真は、これまでプリントはしたがアルバムに入れてもらえるでもなく所在なさげに置いてあった、フィルム写真たち。
アルバムに入れられなかったということは、プリントした当時どうも光るものがみられなかった写真ということ。
でも、トイレの便座に座って、その写真一つ一つを、ぼぅーと眺めていると、不思議と飽きないものだ。
それどころか、美術館で絵画を見ているように、なんだか味のある、いい写真に見えてくる。
写真は、どこかの国の街だったり、木だったり、海だったり。
トイカメラで撮ったものだから、どこかピントが甘い。
ふんわりとしていて、なにか強いメッセージを発するわけでもなく、静かにそこにある感じ。
あと少しで、まとめて捨てられていたかもしれない写真たちが、トイレの壁に貼られて生き返った。
どうも写真というのは、プリントした直後ではわからない不思議な力が備わっているようだ。
音楽でも、絵でも、なんでも通じることかもしれないけれど。
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