修二会で実際に使われる僧衣や道具
処世界役の所作や準備の手順が記された「処世界日記」。江戸時代に火災で焼失する前の堂内の図面もある
今年で1274回目となる東大寺二月堂の 修二会しゅにえ (お水取り)の歴史や魅力を知ってもらう特別陳列「お水取り」が、奈良市の奈良国立博物館で開かれている。1日から本行が始まった修二会の期間に合わせた恒例企画で、二月堂の火災に遭いながらも残った華厳経や本尊光背の断片など55件(うち重要文化財18件)が並ぶ。16日まで。
「不退の行法」と呼ばれる修二会は、1300年近い歴史の中で幾度か訪れた存続の危機を乗り越えてきた。その一つが1667年(寛文7年)、本行中の火災による二月堂の焼失だ。焼け跡から発見され、白い文字が残る「華厳経(二月堂焼経)」(奈良時代)や、火災で破損した二月堂本尊・十一面観音 菩薩ぼさつ の光背の断片(奈良時代、重要文化財)が展示されており、被害に遭う前の美しさをうかがい知ることができる。
また、火災の直前、同年の正月に書き写された「 処世界しょせかい 日記」には、法会の様々な雑用を担う「処世界」役の所作や準備の手順が記述されている。翌年に初参籠した僧・実性が法会で参照するために書写したもので、練行衆の配置が示された焼失前の堂内の図面が描かれており、当時の二月堂の姿を伝える。
道具や僧衣、行事の様子を紹介する写真パネルなども展示。樋笠逸人・研究員は「火災をくぐり抜け、形を変えながら受け継がれた現代に息づく『生きた伝統』を感じてほしい」と話す。
午前9時半~午後6時(12日は午後7時、15日と16日は午後5時まで)。観覧料は一般700円、大学生350円、高校生以下無料。東大寺ミュージアムの特集展示との連動企画で、両展を観覧すると特製の散華がプレゼントされる。問い合わせはハローダイヤル(050・5542・8600)。