芸艸堂に保管されていた東海道中膝栗毛の画帖(京都市中京区で)
大正期制作か 京都の出版社保管
江戸時代にベストセラーとなった滑稽本「東海道中膝栗毛」の大正時代に制作されたとみられる木版画と版木が、京都市中京区の木版画出版社「 芸艸堂うんそうどう 」に保管されていることが分かった。主役の弥次郎兵衛と喜多八が旅した江戸から大阪までの風景が描かれており、原作者の十返舎一九は、今年のNHK大河ドラマの主人公・蔦屋重三郎に見いだされた一人でもあり、関心も高まると考え、同社などは展覧会を構想している。
保管されていたのは、膝栗毛の 画帖がじょう と、その基となる版木。画帖は、江戸・日本橋から大阪・天王寺に至る59か所の風景画に加えて、弥次喜多を紹介する人物画の計60枚で構成されている。
保管されていたのは、膝栗毛の 画帖がじょう と、その基となる版木。画帖は、江戸・日本橋から大阪・天王寺に至る59か所の風景画に加えて、弥次喜多を紹介する人物画の計60枚で構成されている。
風景画6枚ごとに、場面の解説文が日本語と英語で挿入されており、海外にも販売していた可能性があるという。
芸艸堂と、この画帖を手に入れた収集家水野忠始さん(75)が調査したところ、版画の絵を制作したのは画工の「為信」という人物とみられ、大阪にあった木版画出版社「歓喜東巻堂」が発行したとみられるが、詳細はよく分からないという。当時は木版画の出版社が各地にあって、職業的な画工がおり、「為信」もそうした画工たちの一人とみられる。
歓喜東巻堂が廃業した際、版木と画帖が芸艸堂に渡ったとみられるが、その時期や経緯などは不明だ。
歓喜東巻堂が廃業した際、版木と画帖が芸艸堂に渡ったとみられるが、その時期や経緯などは不明だ。
水野さんは、展示しやすいように自身の画帖から木版画を1枚ずつ分割した。十返舎一九は、今年の大河ドラマ「べらぼう~ 蔦重栄華乃夢噺(つたじゅうえいがのゆめばなし ~)」にも関連することから、企画展を構想しており、展示先を探している。
芸艸堂の井上孝一さん(54)は「分からないことが多いが、それがミステリアスで面白い。展示会の企画が具体化すれば協力したい」と話している。
東海道中膝栗毛 江戸の住人・弥次郎兵衛と旅役者・喜多八が連れだって、東海道を旅する珍道中を描いた読み物。2人は伊勢参りをした後、京都や大阪見物に足を延ばす。江戸時代後期に出版されると大変な人気となり、続編も書かれた。